「子どもが急に吐いて、下痢も…」「熱もあるし、食べられない…」
そんなとき、考えられる原因のひとつが感染性腸炎です。
感染性腸炎とは、ウイルスや細菌などが腸に感染し、炎症を起こすことで起こる病気です。乳幼児〜小学生まで、幅広い年齢で見られ、冬にはノロウイルス、夏には細菌性の腸炎が多くなります。
主な症状
お子さんに見られる主な症状は以下のとおりです:
- 突然の嘔吐(吐き戻し)
- 水のような下痢
- 発熱(高熱になることも)
- お腹の痛みや不快感
- 食欲がなくなる
多くは2〜3日で回復に向かいますが、脱水症状には十分注意が必要です。
原因となる病原体
お子さんの感染性腸炎で多いのは次のような病原体です:
- ウイルス性
- ノロウイルス:冬に流行。嘔吐が中心で、発熱は軽度。
- ロタウイルス:乳幼児で多く、白っぽい水様便が特徴。
- 細菌性
- カンピロバクター、サルモネラなど:食べ物(特に肉や卵)を介して感染します。
- 寄生虫性
- 稀ですが、赤痢アメーバなどが原因になることもあります。
ウイルス迅速検査
お子さんが感染性腸炎を疑われるとき、「ウイルスの検査をするかどうか」は症状や年齢、全身状態によって判断します。
検査の種類
- 迅速抗原検査という方法で、便の中にウイルスの成分があるかを調べます。
- 結果は数十分で出るため、外来でも検査が可能です。
- 対象はノロウイルス、ロタウイルスです。
検査の保険適応について
ノロウイルスやロタウイルスの検査は、すべての患者さんに保険でできるわけではありません。以下のような条件があるため、必要な場合に限り実施されます。
- 3歳未満のお子さん
- 65歳以上の高齢者
- がんなどで治療中の方
- 臓器移植を受けた方
- 免疫抑制剤や抗がん剤を使用中の方
健康な4歳以上のお子さんの場合は、保険適応外となることがあります。ご希望があれば自費での検査も可能ですので、ご相談ください。
検査しないこともあるの?
ノロウイルスやロタウイルスの感染性腸炎は、たとえ原因が分からなくても、症状や流行状況からある程度予測ができます。また、特別な治療薬があるわけではなく、基本は脱水予防と安静が治療の中心です。そのため、症状が軽ければ検査を行わずに経過観察することも多くあります。
治療の基本は「水分補給と安静」
まずは水分補給!
嘔吐や下痢による脱水を防ぐために、少量ずつこまめに水分をとらせましょう。
- 経口補水液(OS-1など)がおすすめです。
- スプーンで少しずつ飲ませるのがコツです。
吐き気が強いときには…
制吐剤(吐き気止め)を使用することもあります。座薬やシロップ、点滴など、年齢や症状に合わせた方法を選びます。
無理な食事はNG
食欲がないときは無理に食べさせず、胃腸を休めてあげてください。回復してきたら、
- おかゆ
- すりおろしリンゴ
- 野菜スープ
などから少しずつ食べ始めましょう。
下痢止めは原則使いません
体がウイルスや細菌を外に出そうとする自然な反応です。むやみに止めてしまうと、かえって回復が遅れることがあります。
こんなときは、すぐに受診を!
次のような症状がある場合は、すぐに小児科を受診してください。
- 水分がまったくとれない/飲んでもすぐ吐いてしまう
- 尿が半日以上出ていない(おむつが濡れていない)
- 高熱が続く
- 血便が出る
- 元気がなく、ぐったりしている
感染を防ぐには?
- 手洗いが何より大事です。特にトイレやおむつ替え、食事の前後には石けんでしっかり洗いましょう。
- タオルの共用は避けてください。
- 嘔吐物や便は使い捨て手袋で処理し、次亜塩素酸系の消毒剤で拭き取りましょう。
(ノロウイルスにはアルコールが効きにくいです)
おわりに
感染性腸炎は子どもがよくかかる病気のひとつですが、正しい対処をすれば多くは数日で回復します。一方で、年齢が低いお子さんや、もともと体力が弱いお子さんでは、脱水などの合併症に注意が必要です。
いろはなクリニックでは、小さなお子さんの体調の変化に丁寧に寄り添いながら診療を行っています。気になる症状があるときは、どうぞお気軽にご相談ください。