( 診療案内 )

機能性ディスペプシア

検査しても病気はみつからない、お腹の不調

「食後にすぐお腹が苦しい」「少し食べただけで満腹」「みぞおちが痛い・焼ける感じが続く」
検査で大きな異常が見つからないのに、こうした上腹部の不調が慢性的に続く状態機能性ディスペプシアと呼びます。命に関わる病気ではありませんが、日常生活の質(QOL)を下げやすいため、適切な対処で“うまく付き合う”ことが大切です。

このページでは

  • 機能性ディスペプシアの主な症状タイプ
  • 起こるしくみ
  • 受診の目安
  • 診断の流れ検査の考え方
  • 治療の選択肢
  • 日常生活の工夫
  • いろはなクリニックでできること

を、やさしく分かりやすく解説します。

症状

機能性ディスペプシアの症状は大きく4つに整理されます。これらが生活に支障をきたすレベルで続くときに機能性ディスペプシアを考えます。

  • 食後のもたれ感(お腹が張って苦しい)
  • 食事早期の満腹感(少量でいっぱいになり食べ続けられない)
  • みぞおちの痛み(心窩部痛)
  • みぞおちの灼熱感(焼けるような感じ)

症状の出方で2タイプに分けることがあります

  • 食後愁訴症候群(PDS):食後のもたれ・早期満腹が中心
  • 心窩部痛症候群(EPS):みぞおちの痛み・灼熱感が中心

どうして起こるの?

機能性ディスペプシアはひとつの原因だけで説明できないことが多く、次のような要素が重なって生じると考えられています。

  • 胃・十二指腸の運動機能異常(食べ物を送り出す力の低下など)
  • 内臓の知覚敏感(通常の刺激でも不快に感じやすい)
  • 胃酸の関与
  • ストレス・不安・睡眠不足など心理社会的要因
  • 食事内容や生活リズム(高脂肪食・不規則な食事・早食いなど)
  • 遺伝的要因・体質
  • 感染性胃腸炎の既往
  • ピロリ菌(H. pylori)感染

受診の目安

次の警告徴候がある場合は、早めの精密検査(内視鏡など)を検討します。

  • 体重減少
  • 繰り返す嘔吐
  • 消化管出血(黒色便や吐血)
  • 貧血
  • 発熱
  • 嚥下(飲み込み)障害の進行
  • ご家族に胃がん・食道がんの既往歴
  • 高齢での新規症状出現など

それ以外の場合は、症状・年齢・ピロリ菌の有無・検査歴を総合して機能性ディスペプシアと診断し、治療を開始しすることもあります。内視鏡(胃カメラ)は必須ではありません(必要性は個別に判断します)。

診断の流れ

  1. 問診と診察:症状の内容・出方・期間、ストレスや睡眠、食事・薬(鎮痛薬など)を確認
  2. 検査:血液・便検査、ピロリ菌検査、腹部超音波、上部内視鏡など
    ※内視鏡が必要な場合は、実施可能な施設へご紹介させて頂きます。

器質的疾患(潰瘍・がん等)が否定的で、症状が持続していれば機能性ディスペプシアと考えて治療へ

治療の考え方

生活習慣の見直し

  • 食べ方:ゆっくり・よく噛む/少量を回数分け(3食+軽食)
  • 食事内容脂っこい料理・大盛り・遅い時間の食事を控える/カフェイン・アルコール・炭酸・辛味は様子を見ながら
  • 生活リズム朝食を抜かない/寝る2–3時間前は固形食を避ける/十分な睡眠
  • ストレス対策:軽い運動、深呼吸・入浴、デジタルデトックス など
  • 薬の見直し:解熱鎮痛薬(NSAIDs)や一部の薬剤で悪化することがあるため、薬剤調整を考慮

内服薬

症状に合わせて、以下の薬を4–8週間ほど試して効果を評価します。

  • 酸分泌を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬など):みぞおちの痛み・灼熱感が中心の方に
  • 消化管運動を整える薬(アコチアミド等)食後のもたれ・早期満腹が中心の方に
  • 漢方薬(六君子湯など):食後の張り・食欲低下に役立つことがあります

※すべての方に効く“万能薬”はありません。効いたものを続け、合わなければ切り替えるのがポイントです。治療では期待や安心感が症状を和らげる面も知られており、医師と二人三脚で進めることが改善への近道です。

ピロリ菌への対応

ピロリ菌が陽性の場合は、除菌治療を検討します。除菌による症状改善効果は必ずしも発現するとは限りませんが、潰瘍・胃がん予防の観点からも意義があります。

その他

  • 心身両面のケア:不安・睡眠障害が強い場合は、心療内科的アプローチ(認知行動療法など)や、向精神薬を少量用いることがあります。
  • 漢方の併用:六君子湯以外を含め、症状像に合わせて選ぶことも。
  • 治療の卒業と再開:落ち着いたら減薬・中止を相談します。しかし、再発も珍しくないため、再燃時は早めに再受診しましょう。

いろはなクリニックでできること

  • 問診と診察で、症状・生活リズム・ストレス背景を把握
  • 必要な検査の選択(血液/ピロリ菌チェック/内視鏡の要否判断 など)
  • オーダーメイドな治療計画:生活アドバイス+症状に合った内服薬の試行と見直し
  • 地域連携:難治例は消化器内科・心療内科とも連携をします
  • 再発時のフォロー:再燃サイン(食後の張りが増える、早期満腹が強くなる等)への早期介入

まとめ

機能性ディスペプシアは、命に関わる病気ではない一方、毎日の快適さを左右する“やっかいな病気”です。
食べ方・生活リズムの工夫+あなたに合う治療の組み合わせで、「つらさを減らし、できることを増やす」ことが目標です。
「この症状、もしかして…?」と思ったら、遠慮なくご相談ください。一緒に最適な対策を見つけていきましょう。

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