
脂肪肝は、肝臓に脂肪がたまりやすくなった状態です。自覚症状がほとんどない一方で、背景に肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病が隠れていることが多く、放置すると一部の方では肝臓の線維化(かたくなる変化)が進み、肝硬変や肝がんにつながる可能性があります。
さらに脂肪肝は肝臓だけの問題ではなく、生活習慣病と重なって、心筋梗塞や脳卒中などの心血管イベント、腎機能障害のリスクとも関連します。
このページでは脂肪肝に関して説明していきます。
近年の名称変更:NAFLD/NASH から MASLD/MASH へ
これまで「お酒が主因ではない脂肪肝」を NAFLD、そのうち炎症が強いタイプを NASH と呼ぶことが一般的でした。現在は、脂肪性肝疾患の名称・分類が見直され、
- MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)
- MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)
という名称が用いられるようになりました。
MASLDとは?
MASLDは、画像検査(腹部エコーなど)や必要な検査で脂肪肝があることを確認したうえで、次の点を総合して判断します。
1) 生活習慣病に関わるリスクがあるか(心代謝系危険因子)
脂肪肝に加えて、肥満・血糖異常(糖尿病など)・血圧・脂質異常といった心代謝系のリスク因子を少なくとも1つ以上伴うことが重要です。
2) 「別の原因の脂肪肝」を除外する
薬剤、ウイルス性肝炎、遺伝性疾患など、二次性の脂肪肝が疑われる場合は原因検索が必要です。
3) 飲酒量の確認
MASLDは「過量飲酒が主因ではない」ことが前提です。診療では飲酒量を確認し、一定量以上の飲酒がある場合はアルコール性肝炎として取り扱います。
一般的な目安として、純アルコール量で
- 男性:週210g未満(1日あたり約30g未満)
- 女性:週140g未満(1日あたり約20g未満)
の範囲かどうかを確認します。
純アルコール量の換算
純アルコール約20gは、概ね次のいずれかに相当します(製品や度数で変わります)。
- ビール(5%)500mL: 約20g
- 日本酒 1合(180mL): 約22g
- ワイン(12%)200mL: 約19g
- 焼酎(25%)100mL: 約20g
- ウイスキー(40%)ダブル60mL: 約19g
この換算で考えると、目安は以下のようになります。
- 女性の目安(1日約20g未満):
「ビール500mL程度」または「日本酒1合程度」くらいまでが一つの目安 - 男性の目安(1日約30g未満):
「ビール850mL」くらいまでが一つの目安
(※“毎日”か“休肝日があるか”でも週量は大きく変わります)
MASHとは?
MASLDの中でも、肝臓に脂肪がたまるだけでなく、炎症(脂肪肝炎)が強いタイプが MASH です。MASHでは肝臓の線維化が進みやすい可能性があるため、より丁寧な評価とフォローが必要になります。
どんな検査を行うのか
当院では、状況に応じて次のような評価を組み合わせます。
- 血液検査(肝機能、脂質、血糖、他の肝疾患の除外など)
- 腹部エコーなどの画像検査(脂肪肝の確認、他疾患のチェック)
- 線維化(肝臓が硬くなる変化)の評価
血小板数や各種指標、必要に応じてスコア(FIB-4)などで進行例の拾い上げを行います。
線維化が疑われる場合や、肝硬変が疑われる所見がある場合は、専門医療機関と連携して精査を検討します。
治療の基本は「生活習慣の改善」
MASLDの治療の中心は、食事と運動による体重・代謝の改善です。特に肥満を伴う場合は、体重を減らすことで肝機能の改善が期待できます。
目標の立て方は体格や病状で変わりますが、一般に「まず数%の体重減少」から現実的に始め、継続できる方法を一緒に作っていくことが大切です。
合併する生活習慣病の治療も重要です
脂肪肝は、糖尿病や脂質異常症、高血圧などと“セット”で進行しやすいため、肝臓だけでなく全身の管理が重要です。
糖尿病や脂質異常症を合併する場合、患者さんの病状に応じて、糖尿病治療薬(例:GLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬)や脂質異常症治療薬(例:スタチン、ペマフィブラート等)を、合併症の治療として検討することがあります。
※これらは「脂肪肝そのものの特効薬」という位置づけではなく、まずは生活習慣改善を土台に、必要に応じて併用していく考え方です。
受診の目安
健診などで次を指摘された方は、一度ご相談ください。
- 「脂肪肝」と言われた
- AST/ALT/γ-GTPなど肝機能異常が続く
- 体重増加、腹囲の増加がある
- 糖尿病・高血圧・脂質異常症がある(または境界域と言われた)
- 家族に肝硬変・肝がんの方がいる
いろはなクリニックでの考え方
当院では、脂肪肝を「肝臓の問題」だけとして扱わず、生活習慣病と一体で捉え、
肝臓の進行リスク(線維化)と、心血管・腎機能など全身のリスクの両面から評価します。
無理な制限や短期勝負ではなく、長く続けられる形で、食事・運動・必要な内服を組み合わせて治療方針を一緒に考えていくことを大切にしています。お気軽にご相談ください。