( 診療案内 )

過敏性腸症候群

お腹の不調と上手につき合うために

「お腹の調子が悪いのに、検査では異常がない」と言われて困っている方はいませんか?
実はそれ、IBSの特徴かもしれません。

IBSは命に関わる病気ではありませんが、腹痛や下痢・便秘が続くことで、学校や仕事、外出など日常生活に大きな支障をきたすことがあります。人によって症状の出方はさまざまで、「なかなか人に理解してもらえない」というつらさを抱える方も少なくありません。

このページでは、IBSの原因やタイプ、治療法、日常生活での工夫などを分かりやすくご紹介します。
「病気のことを知る」ことは、症状をうまくコントロールするための第一歩です。ぜひ参考にしてみてください。

過敏性腸症候群(IBS)とは?

「お腹がよく痛くなる」
「便秘や下痢を繰り返す」
そんな症状で長年悩んでいる方はいませんか?

過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)は、検査では大きな異常が見つからないのに、お腹の不調が続く病気です。

主な症状は

  • 慢性的な腹痛やお腹の不快感
  • 下痢や便秘、またはその繰り返し
  • お腹の張りやガス

特徴的なのは「症状がストレスや食生活に影響されやすい」という点です。

日本では成人の約10人に1~2人がIBSを持っているとされ、20~30代の若い世代に多いといわれています。

IBSのタイプ

IBSは便の状態によって、いくつかのタイプに分けられます。

  • 便秘型(IBS-C):硬い便が多く、便秘が続くタイプ
  • 下痢型(IBS-D):軟便や水のような便が多いタイプ
  • 混合型(IBS-M):便秘と下痢を繰り返すタイプ
  • 分類不能型(IBS-U):どのタイプにもはっきり当てはまらないタイプ

※同じ人でも、時間がたつとタイプが変わることがあります。

IBSの原因は?

IBSの正確な原因はまだ分かっていませんが、いくつかの要因が関係していると考えられています。

  • 腸の動きの異常(便が早く・遅く通過する)
  • 腸の過敏さ(少しの刺激で痛みを感じやすい)
  • 腸内環境の乱れ(腸内細菌のバランス)
  • ストレスや心の影響(脳と腸は自律神経を通じて強くつながっています=脳腸相関)

どんな検査をするの?

IBSは「検査で異常がないことを確認して初めて診断される病気」です。

  • 血液検査や便の検査
  • 大腸カメラ(必要な場合)
  • 腹部エコーやCT

などを行い、がんや炎症性腸疾患といった他の病気を除外した結果、診断されます。

治療の考え方

IBSは命に関わる病気ではありませんが、生活の質(QOL)を大きく下げてしまいます。
治療の目標は「症状を完全にゼロにする」ことよりも、「症状をコントロールして安心して生活できるようにする」ことです。

生活習慣の見直し

  • 規則正しい食生活(夜食や早食いを避ける)
  • 睡眠をしっかりとる
  • 適度な運動(ウォーキングやヨガがおすすめ)
  • ストレス対策(趣味やリラックス法を取り入れる)

食事の工夫

  • 便秘型の方:食物繊維(野菜、海藻、豆類)を少しずつ増やす
  • 下痢型の方:脂っこい食事、アルコール、カフェイン、香辛料は控える
  • 共通して:お腹に合わない食べ物を日記に記録し、避ける

※最近は「低FODMAP(フォドマップ)食」という食事療法も注目されています。これは、腸でガスを発生しやすい食材を減らす方法です。

お薬による治療

症状に応じて、以下のお薬が使われます。

  • 便秘を改善する薬(腸の動きを調整する薬、便を柔らかくする薬など)
  • 下痢を改善する薬(腸の動きを抑える薬など)
  • 腸内環境を整える薬(乳酸菌やビフィズス菌=プロバイオティクス)
  • 痛みや不快感を和らげる薬
  • 心と体を整える薬(抗不安薬や抗うつ薬が使われることもあります)

心のケアも大切に

IBSは「心身症」のひとつとされ、心理的な要因が強く関わることもあります。
そのため、カウンセリングや認知行動療法(心理療法)が役立つ場合もあります。

注意すべきサイン

次のような症状がある場合は、IBSではなく別の病気の可能性があるため、専門機関による精密検査が必要となる場合があります。

  • 血便が出る
  • 発熱や体重減少がある
  • 夜中に腹痛や下痢で目が覚める
  • 50歳以降に初めて症状が出てきた

いろはなクリニックで出来ること

いろはなクリニックでは、IBS(過敏性腸症候群)でお悩みの方に対して、薬物療法に加え、漢方や栄養療法を積極的に取り入れた包括的なサポートを行っています。

  • 丁寧な問診
    症状の背景を詳しくお聞きし、必要に応じて血液・便検査などを行います。患者さん毎に最適な治療方針を立てます。
  • 生活習慣・食事のアドバイス
    食事日記や低FODMAP食などを取り入れ、お腹にやさしい食生活を一緒に工夫していきます。
  • 薬による治療
    症状のタイプ(便秘型・下痢型・混合型)に合わせて、お薬を使用します。必要に応じてプロバイオティクス(乳酸菌・ビフィズス菌製剤)も組み合わせます。
  • 漢方治療
    IBSはストレスや体質が大きく関わるため、漢方薬が有効な場合があります。
     桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう):下痢や腹痛を和らげる
     半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう):下痢やお腹の張り、吐き気に有効
     大建中湯(だいけんちゅうとう):冷えや便秘に伴う腹部膨満感を改善
     こうした漢方を、ひとりひとりの症状や体質に合わせて処方し、症状改善を目指します。
  • 心のケアとホリスティックな視点
    IBSは「脳腸相関(のうちょうそうかん)」が深く関与するため、ストレス対策や心理的サポートも重要です。いろはなクリニックでは、西洋医学に加えて漢方・栄養医学の知見を取り入れ、体と心の両面からトータルにサポートします。

栄養療法を中心とした過敏性腸症候群の解説記事

【栄養療法の視点】過敏性腸症候群

まとめ

過敏性腸症候群(IBS)は、命に関わる病気ではありませんが、生活の中で大きなストレスになることがあります。

  • 自分に合った生活習慣や食事で「症状をコントロールする」
  • 必要に応じて「お薬や心理療法を取り入れる」
  • 我慢せず、気になる症状は医師に相談する

こうした工夫で、日常生活の快適さを取り戻すことができます。

「もしかしてIBSかも?」と感じたら、ぜひ一度ご相談ください。
いろはなクリニックでは、西洋医学だけでなく、栄養・漢方・心のケアも取り入れながら、患者さん一人ひとりに合ったサポートを行っています。