( 診療案内 )

【漢方の視点】長引く咳

長引く咳に対する西洋医学と東洋医学の見方、治療の工夫を解説します

夜も咳が止まらず眠れない、風邪が治ったのに咳だけが何週間も続いている――。このような「長引く咳」は日常生活に支障をきたし、とてもつらい症状です。
原因はさまざまで、風邪や気管支炎の後に咳が続く「咳喘息」や「感染後咳嗽」、アレルギーや後鼻漏(鼻水がのどに落ちる)によるものなどがあります。西洋医学の治療に加え、漢方では体質や症状に応じて咳を和らげるアプローチが可能です。
この記事では、長引く咳を西洋医学と漢方の両面から解説し、当院で用いる漢方薬や生活の工夫について紹介します。

西洋医学から見た長引く咳

咳が3週間以上続く場合を「遷延性咳嗽」、8週間以上を「慢性咳嗽」と呼びます。
主な原因は以下の通りです。

  • 感染後咳嗽(風邪や気管支炎の後に残る咳)
  • 咳喘息(気管支喘息に準じる病態)
  • アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎による後鼻漏
  • 胃食道逆流症(GERD)による咳
  • 薬剤性(例:降圧薬ACE阻害薬による咳)

治療は原因に応じて、抗ヒスタミン薬、気管支拡張薬、去痰薬、制酸薬などが用いられます。

漢方から見た長引く咳

漢方では咳は「肺」の失調と捉えます。外邪(風邪など)が去った後も、肺が弱って咳が長引く場合があります。

  • 肺陰虚(はいいんきょ):乾いた咳、痰が少ない、のどの乾き、声枯れ
  • 痰湿阻肺(たんしつそはい):痰が多く、重だるさや胸のつかえを伴う
  • 気虚(ききょ):体力が落ち、咳が長引き、息切れや倦怠感を伴う

当院でよく用いる漢方薬

  • 麦門冬湯(ばくもんどうとう)
    のどが乾き、痰が少なく、から咳が続く場合に用います。気道粘膜を潤して鎮咳します。
    ⚠️ 痰が多い咳には不向き。
  • 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
    水っぽい痰、鼻水、咳を伴う場合に有効です。アレルギー性鼻炎や風邪の後の咳に適応します。
    ⚠️ 体力の落ちている方や乾燥傾向の咳では注意。
  • 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
    のどの腫れや違和感、痰のからみを伴う咳に。副鼻腔炎や咽頭炎後に咳が残る場合にも使われます。
    ⚠️ 体の熱が強くない場合は不適応となることがあります。

養生の工夫

  • 部屋の加湿を心がけ、のどや気道を乾燥させない
  • 冷たい飲食物は控え、白湯や温かい食事で肺を守る
  • 咳を悪化させるタバコや刺激物は避ける
  • 体力を養うため、十分な睡眠とバランスの取れた食事を心がける

まとめ

長引く咳は日常生活を妨げるだけでなく、背景に喘息や胃食道逆流症などの病気が隠れている場合があります。西洋医学的治療とあわせて、漢方は咳のタイプや体質に応じたアプローチが可能です。

長引く咳でお困りの方は、当院へご相談ください。