( 診療案内 )

39. 苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)

めまい・立ちくらみ・動悸…体の“水の偏り”からくる不調に

苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)は、めまい・ふらつき・立ちくらみ・動悸など、水分の巡りが悪いことから起こる不調に使われる漢方薬です。体の「水」が余分にたまってしまうことで、自律神経や循環が乱れ、バランスを崩しているときに適しています。

こんな症状に使われます

  • めまい、立ちくらみ、ふらつき
  • 動悸、息切れ、胸のつかえ
  • 頭重感、むくみ
  • 乗り物酔い
  • 不安感や神経過敏を伴う動悸
  • メニエール病や起立性調節障害の補助療法

特に、「水っぽい体質」「めまいと動悸を繰り返す」といった方に合いやすい処方です。

中医学的な見方

苓桂朮甘湯は、「痰飲(たんいん)」と呼ばれる病態に対して用いられる代表的な処方です。

痰飲とは?

  • 本来、胃や脾(消化吸収を担う臓腑)が水分を適切に処理し、体内の津液(水分)は全身にうるおいとして巡ります。
  • しかし脾の働きが弱ると、水分代謝が滞り、体内に“不要な水”がたまります。
  • この停滞した水分が「痰飲」と呼ばれ、臓腑や経絡にたまることでさまざまな症状を引き起こします。

痰飲が引き起こす典型的な症状

  • 頭部にたまれば → めまい、頭重感
  • 胸にたまれば → 動悸、胸苦しさ
  • 四肢にたまれば → むくみ、だるさ
  • 全身に及べば → 不安感やふらつき

苓桂朮甘湯は、この「痰飲」を取り除き、水の巡りを整えることで症状を改善していきます。

成分と作用

  • 茯苓(ぶくりょう):利水作用でむくみやめまいを改善
  • 桂皮(けいひ):血行促進、体を温める
  • 白朮(びゃくじゅつ):脾胃を補い、水分代謝を助ける
  • 甘草(かんぞう):調和作用、抗炎症作用

シンプルな4種類の構成で、体の「水の偏り」を整える点が特徴です。

使用上の注意

  • 副作用:発疹、胃部不快感、むくみ、偽アルドステロン症(低カリウム血症、高血圧など)に注意。
  • 体質との相性:体力が中等度で、水分停滞による症状が目立つ方に合います。
  • 慎重投与:虚弱で冷えが強い方や、腎機能障害のある方は注意が必要です。

最後に

苓桂朮甘湯は、「めまい・動悸・立ちくらみ」など水分の巡りが関係する不調に対して、体の内側からバランスを整えてくれる漢方薬です。特に、循環器や自律神経の症状と結びつくケースで活用されます。気になる症状がある方は、当院までご相談ください。