手足の先が冷えて眠れない、冬になると体調を崩しやすい、年中下半身が冷たい…
こうした「冷え症」は多くの方が悩む症状です。西洋医学では明確な病名とはされませんが、甲状腺機能低下症や貧血、循環障害などが隠れている場合もあり注意が必要です。
漢方では冷えを「体を温める力が不足している」「血や水の巡りが悪い」と捉え、体質に応じたアプローチを行います。この記事では、冷え症を西洋医学と漢方の両面から解説し、当院で用いる漢方薬や生活の工夫について紹介します。
西洋医学から見た冷え症
冷え症は症状であり、独立した疾患名ではありません。
- 循環障害(動脈硬化、末梢血管障害など)
- 代謝低下(甲状腺機能低下症、低体温)
- 血液異常(貧血など)
- 自律神経の乱れ(ストレス、ホルモンバランスの変化)
治療は基礎疾患の改善が第一です。冷えの自覚症状に対しては、生活習慣改善や運動療法、必要に応じて薬物療法が行われます。
漢方から見た冷え症
漢方では冷えは単なる「温度の問題」ではなく、体内のバランスの乱れとして捉えます。
- 腎陽虚(じんようきょ):体を温める力の不足 → 下半身の冷え、頻尿、腰のだるさ
- 血虚(けっきょ):血が不足 → 手足の冷え、めまい、顔色の悪さ、月経不順
- 気虚(ききょ):エネルギー不足 → 冷えに加え、倦怠感、風邪をひきやすい
- 瘀血(おけつ):血流が滞る → 四肢末端の冷え、肩こり、月経痛
当院でよく用いる漢方薬
- 八味地黄丸(はちみじおうがん)
下半身の冷え、腰のだるさ、頻尿を伴う場合に。加齢に伴う体力低下にも用いられます。
⚠️ 高血圧や浮腫がある方は注意が必要です。 - 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
血虚・水滞タイプに。冷えに加え、むくみ、月経不順、頭痛などを伴う女性に多く使われます。
⚠️ 妊娠中は使用に注意が必要です。 - 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
瘀血タイプに。手足の冷えと同時にのぼせ、肩こり、月経痛を伴うときに。
⚠️ 出血傾向のある方では注意が必要です。 - 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
気虚タイプに。疲れやすさ、倦怠感を伴い、冷えやすい体質の改善に用います。
⚠️ 多汗や胃もたれを悪化させることがあるため、体質を考慮して使用します。
養生の工夫
- 温かい食事を心がけ、冷たい飲み物や生ものは控える
- 軽い運動やストレッチで血流を促す
- 入浴や足湯で体を温め、睡眠の質を整える
- ストレスをためず、自律神経のバランスを保つ
まとめ
冷え症は体質の問題と思われがちですが、背景には病気が隠れていることもあります。西洋医学的な検査で異常がない場合でも、漢方は体質や症状に合わせて冷えの改善をサポートします。
冷え症でお困りの方は、当院へご相談ください。