( 診療案内 )

【漢方の視点】慢性疲労

慢性疲労を漢方(東洋医学)の観点から解説します

しっかり休んでも疲れが取れない、常に体がだるい、集中力が続かない…
このような「慢性疲労」は、現代社会で非常に多くの方が抱える悩みです。過労やストレス、不眠、栄養不足に加えて、感染症の後遺症や内分泌疾患が背景にあることもあります。西洋医学ではまず原因の特定と除外診断が重要であり、対症療法が中心となります。一方、漢方では慢性疲労を「気・血・水」のバランスや五臓の働きの乱れとしてとらえ、体質に応じて改善を図ります。この記事では、慢性疲労を西洋医学と漢方の両面から解説し、当院で用いる漢方薬や生活の工夫について紹介します。

西洋医学から見た慢性疲労

慢性疲労は、少なくとも6か月以上持続する疲労感があり、休養しても十分に改善しない状態を指します。原因は多岐にわたり、以下が代表的です。

  • 睡眠障害(不眠症、睡眠時無呼吸症候群)
  • 内分泌・代謝異常(甲状腺機能低下症、糖尿病、副腎不全)
  • 精神的要因(うつ病、不安障害、ストレス関連障害)
  • 感染後症候群(ウイルス感染後の長引く倦怠感)
  • 慢性疲労症候群(ME/CFS)など

治療は原因に応じた対症療法(睡眠改善、栄養補給、薬物治療、心理的サポート)が行われます。

漢方から見た慢性疲労

漢方では、慢性疲労は「気・血・水」の不足や偏りとしてとらえます。

  • 気虚(ききょ):エネルギー不足 → 疲れやすい、息切れ、食欲不振
  • 血虚(けっきょ):血が不足 → めまい、集中力低下、顔色不良
  • 腎虚(じんきょ):加齢や慢性疾患で腎の力が低下 → 下半身のだるさ、腰痛、頻尿
  • 気鬱(きうつ):ストレスで気が滞り → 精神的疲労、気分の落ち込み

当院でよく用いる漢方薬

  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
    慢性的な疲労、食欲不振、倦怠感がある方に。気を補い、体力を回復させます。
    ⚠️ 多汗や胃もたれを悪化させることがあるため、体質を考慮して使用します。
  • 六君子湯(りっくんしとう)
    胃腸が弱く、食欲不振や消化不良を伴う疲労に。消化吸収を改善し、体を支えます。
    ⚠️ 急性の胃腸炎や強い腹痛には不向きです。
  • 加味帰脾湯(かみきひとう)
    疲れに加えて不眠や不安、気分の落ち込みを伴う方に。心身を支え、気血を補います。
    ⚠️ 甘草含有のため、低カリウム血症に注意。
  • 八味地黄丸(はちみじおうがん)
    加齢や腎虚による疲れ、腰や下半身の冷え、頻尿を伴う方に。腎を補って体のエネルギーを支えます。
    ⚠️ 高血圧や浮腫のある方には注意が必要です。

養生の工夫

  • 睡眠を優先し、規則正しい生活リズムを整える
  • 栄養バランスのとれた食事を心がける(特にタンパク質・鉄分・ビタミンB群)
  • 過度な運動は避け、軽いストレッチや散歩で体を整える
  • ストレスマネジメント(呼吸法・瞑想・趣味の時間を持つ)
  • PC・スマホの夜間使用を減らし、自律神経を整える

まとめ

慢性疲労は単なる「疲れ」ではなく、背景にさまざまな要因が隠れている可能性があります。西洋医学では原因検索と対症療法が中心ですが、漢方は体質や心身の状態に合わせて「気・血・水」を整え、疲労回復をサポートします。

慢性疲労でお困りの方は、当院へご相談ください。