( 診療案内 )

23. 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

冷え・貧血・むくみ・月経不順…さらにコロナ後遺症の嗅覚・味覚障害にも

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)は、血(けつ)の不足や水分代謝の乱れによって起こる女性の不調を整える漢方薬です。月経不順・更年期障害・冷え・貧血・むくみに広く使われるほか、近年では新型コロナウイルス感染後の嗅覚・味覚障害に対しても応用されています。

こんな症状に使われます

  • 月経不順、生理痛、生理前の不調(PMS)
  • 更年期障害にともなうのぼせ・頭痛・冷え
  • 不妊症の体質改善目的
  • 貧血傾向(顔色不良、めまい、倦怠感)
  • むくみやすい、手足が冷える
  • 妊娠中のむくみ・体調不良(医師管理下で)
  • コロナ後遺症の嗅覚障害・味覚障害

中医学的な見方

当帰芍薬散は、「血虚(けっきょ)」「脾虚(ひきょ)」「水滞(すいたい)」の3つが重なった状態に用いられます。

  • 血虚:血が不足し、顔色が悪い・めまい・疲れやすい
  • 脾虚:消化機能が弱く、むくみやすい・冷えやすい
  • 水滞:余分な水が体にたまり、頭痛・めまい・むくみを引き起こす

当帰芍薬散は、「血」を補い、「脾」を助けて水をさばき、全身のバランスを整える処方です。

成分と作用

6つの生薬で構成されています:

  • 当帰(とうき):血を補い、血流を改善
  • 芍薬(しゃくやく):血を養い、筋肉の緊張や痛みを緩和
  • 川芎(せんきゅう):血行を促進し、頭痛や冷えを改善
  • 茯苓(ぶくりょう)・白朮(びゃくじゅつ)・沢瀉(たくしゃ):水分代謝を調整し、むくみやめまいを改善

「血」を補いながら「水」をさばくことで、女性の体質をやさしく整えます。

使用上の注意

  • 副作用:胃部不快感、下痢、発疹などが報告されています。
  • 体質との相性:冷え・虚弱・水滞傾向の方に向きます。実証でのぼせが強い方には不向きです。
  • 妊娠・授乳中:必ず医師の指導下で使用してください。

最後に

当帰芍薬散は、女性の体質改善薬として長く用いられてきた処方ですが、近年ではコロナ後遺症による嗅覚・味覚障害にも効果が期待されています。西洋医学では治療に難渋する症状に対して、新しい選択肢の一つとなりえます。気になる症状がある場合は、ぜひ当院へご相談ください。