食後に胃が重い、すぐ満腹になってしまう、みぞおちの痛みや不快感が続く…
検査をしても潰瘍や腫瘍などの異常が見つからないのに症状が続く場合、「機能性ディスペプシア(FD)」と診断されます。日本人の10人に1人が経験するとされるほど頻度の高い疾患で、ストレスや生活習慣の影響も大きいといわれます。西洋医学では消化管運動改善薬や胃酸分泌抑制薬が使われますが、症状が長引く方も少なくありません。漢方では「胃の働き」と「気の巡り」を整えることで、根本的な改善を目指します。
西洋医学から見た機能性ディスペプシア
FDは「症状が6か月以上続き、直近3か月間に症状があったが、器質的疾患がない場合」に診断されます。主な症状は以下の2型に分けられます。
- 食後愁訴症候群(PDS):食後の胃もたれ、早期満腹感
- 心窩部痛症候群(EPS):みぞおちの痛み、不快感
原因は明確ではありませんが、胃の運動低下、知覚過敏、胃酸分泌異常、ピロリ菌感染、ストレスや自律神経の乱れが関与するとされています。
治療は消化管運動改善薬、酸分泌抑制薬、抗うつ薬や抗不安薬が用いられます。
漢方から見た機能性ディスペプシア
漢方ではFDを「脾胃(消化機能)」の失調と「気の巡りの乱れ」としてとらえます。
- 脾気虚(ひききょ):胃腸の働きが弱く、食欲不振、倦怠感、軟便を伴う
- 気滞(きたい):ストレスで胃が張り、みぞおちがつかえる
- 湿熱(しつねつ):胃に熱や湿がこもり、胃もたれや口苦、げっぷを伴う
- 寒邪(かんじゃ):冷えで胃腸が働かず、腹部膨満や冷感を訴える
当院でよく用いる漢方薬
- 六君子湯(りっくんしとう)
胃腸が弱く、食欲不振や胃もたれ、倦怠感を伴う場合に。消化吸収を助け、胃の働きを整えます。
⚠️ 急性胃腸炎や強い胃痛には不向きです。 - 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)
胃のつかえ、吐き気、下痢と便秘を繰り返すタイプに。胃腸の炎症や水分停滞を調整します。
⚠️ 胃腸虚弱の方では下痢を助長する可能性があります。 - 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
ストレスによる喉や胸のつかえ感、胃の不快感に。気の巡りを改善します。
⚠️ 長期連用で胃腸障害が悪化する場合があります。 - 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
慢性的な胃腸虚弱、疲れやすさを伴う場合に。気を補い、消化吸収を支えます。
⚠️ 多汗や胃もたれを悪化させる可能性があり、体質を考慮して使用します。
養生の工夫
- 少量ずつ規則正しく食べ、暴飲暴食を避ける
- 冷たい飲食物や脂っこい料理を控える
- ストレスを溜めないよう、軽い運動や趣味の時間を持つ
- 睡眠不足を避け、自律神経を整える
- 食後すぐに横にならず、30分程度は軽く過ごす
まとめ
機能性ディスペプシアは検査で異常が見つからないにもかかわらず、生活の質を大きく下げる疾患です。西洋医学的治療に加えて、漢方は「胃腸の力を補う」「気の巡りを整える」ことで改善をサポートします。
機能性ディスペプシアでお困りの方は、当院へご相談ください。