( 診療案内 )

蒼朮(そうじゅつ)

胃腸を整え、水の巡りを助ける“補気の要”

概要

蒼朮(そうじゅつ)は、胃腸の働きを高め、体にたまった余分な水分(湿)を取り除く生薬です。
日本では、ツムラをはじめとする多くの製剤で白朮ではなく蒼朮が用いられており、
「脾(ひ)=消化吸収の中心」を健やかに整える代表的な健脾薬・利湿薬として知られています。

むくみ、食欲不振、胃のもたれ、倦怠感、下痢、頭の重さなど――
湿気や胃腸の弱りが関係する症状によく用いられます。
また、気を補う薬(人参・黄耆など)と組み合わせることで、
「気」と「水」の両面からバランスを整えます。


基本情報

項目内容
生薬名蒼朮(そうじゅつ)
学名Atractylodes lancea または Atractylodes chinensis
使用部位根茎
性味温・辛・苦
帰経脾・胃
分類芳香化湿薬(ほうこうけしつやく)/健脾薬

主な働き

① 胃腸の働きを整え、湿をさばく

蒼朮は、消化吸収を担う「脾(ひ)」を健やかにし、体内の余分な湿を除きます。
食欲不振、胃のもたれ、下痢、むくみ、頭の重さなど、
湿気が原因のだるさや消化不良に効果的です。

とくに梅雨時や雨の日に体調を崩しやすい方、
気圧の変化でむくみや倦怠感を感じる方に適しています。


② 体を温め、冷えからくる不調を改善

蒼朮は温性の生薬で、冷えによる腹部の不快感や下痢を和らげます。
冷えと湿が同時に存在する「寒湿(かんしつ)」の状態を改善し、
体を内側から温めながら余分な水分をさばきます。


③ 気を補う生薬との相性が良い

蒼朮は単独でも胃腸を支えますが、
人参・黄耆・甘草などの補気薬と組み合わせることで、
「気虚(ききょ)+湿」の状態をより的確に整えます。
六君子湯や補中益気湯などで重要な役割を果たします。


④ 体の防衛力を高める

蒼朮は、外からの湿気や病邪を防ぐ「衛気(えき)」を強め、
風邪をひきやすい・季節の変わり目に体調を崩しやすい方の体質改善にも使われます。


東洋医学的な視点

東洋医学では、蒼朮は**「健脾化湿(けんぴけしつ)」**の代表生薬です。

  • 健脾:脾の機能を高め、食欲と消化を改善
  • 化湿:余分な湿を除き、むくみ・重だるさを軽減
  • 燥湿健脾:湿による冷え・だるさ・軟便を整える

また、湿を除く一方で、過剰な水分を奪いすぎない穏やかさを持ち、
気虚体質の人でも使いやすいのが特徴です。

含まれる代表的な漢方処方

注意点

  • 乾燥体質・便秘傾向の方では、使用により口の渇きを感じることがあります。
  • 長期服用では体質に合わせて調整が必要です。
  • 強い湿・むくみを伴う場合は、茯苓・沢瀉などの利水薬を併用することが一般的です。

一言メモ

蒼朮は「湿をさばき、気をめぐらせる根」。
胃腸を温めながら体の巡りを整え、重だるさやむくみを軽くしてくれる
まさに“内側から晴れ間をつくる”生薬です。