( 診療案内 )

RSウイルスワクチン

RSウイルスワクチンについて解説します

2026年4月から、妊婦さんを対象としたRSウイルス(RSV)ワクチンが定期接種になる予定です 。

「なぜ妊婦が接種するの?」
「赤ちゃんにはどんなメリットがあるの?」
と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

この記事では、わかりやすくRSウイルス感染症とワクチンについて解説します。

RSウイルス(RSV)とは?

RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus)は、乳幼児に重い呼吸器感染症を引き起こすウイルスです。

RSウイルスの主な特徴

  • 毎年秋〜冬に流行
  • ほぼすべての子どもが2歳までに一度は感染する
  • 大人では軽症で済むが、乳児は重症化しやすい
  • 再感染を繰り返す(免疫が長く続かない)

いわゆる「赤ちゃんが入院することもある強い風邪」がRSウイルスです。

RSウイルス感染症とは?乳幼児でなぜ危険なのか

RSウイルスは、乳児の肺の奥にある細気管支(さいきかんし)に炎症を起こし、重症化することがあります。

細気管支炎とは?

RSウイルスが細気管支に感染すると、

  • 粘膜がむくむ
  • 粘り気のある分泌物が増える
  • 気道が物理的に細くなる

といった変化が起こり、空気が通りにくくなります

赤ちゃんはなぜ重症化しやすい?

乳児はもともと、

  • 気道が細い
  • 肺が小さい
  • 呼吸の筋肉が弱い

ため、少しの炎症でも呼吸困難になりやすいのです。

細気管支炎で見られる症状

  • ゼーゼー・ヒューヒュー(喘鳴)
  • 肋骨の間がペコペコへこむ「陥没呼吸」
  • ミルクが飲めない
  • 咳がひどい
  • 呼吸が速い
  • ぐったりする

これらは、気道が詰まりかけているサインです。

RSウイルスは、乳児の細気管支炎や肺炎の主要原因であり、0〜5か月乳児の入院原因として最も多いウイルスの一つです。

RSウイルスで起こる「無呼吸発作」とは?

無呼吸発作(むこきゅうほっさ)とは、赤ちゃんの呼吸が10〜20秒以上止まってしまう状態で、RSウイルスの中でも最も危険な合併症の1つです。

どれくらい起こる?

研究によっては、RSウイルスで入院した乳児の1〜20%で無呼吸が観察された、と報告されています。

無呼吸が起こりやすい赤ちゃん

  • 生後3か月未満
  • 早産児
  • 心疾患・慢性肺疾患のある赤ちゃん
  • 免疫が弱い赤ちゃん

RSウイルスは「非常に身近で、しかし重症化しうる」感染症

RSウイルスは、

  • 「非常に多くの子どもがかかる」
  • 「乳児にとっては重症化しうる」

という二面性を持っています。だからこそ、生まれたばかりの赤ちゃんを守る予防法が非常に重要となります。

なぜ“妊婦さん”にRSウイルスワクチンを接種するのか?

妊婦ワクチン=赤ちゃんへの「おくりもの」

妊婦さんがRSウイルスワクチンを接種すると、妊婦さんの体に中和抗体がつくられ、その抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行します。この仕組みを「母子免疫(母体免疫)」と呼びます。

生後すぐの赤ちゃんはワクチンが打てず、自分で免疫を作る力が弱いので、お母さんからもらう抗体が、生後すぐの命を守る大切な予防策になります。

世界中で、妊婦ワクチンの有効性が確認されています。

RSウイルスワクチン

ワクチンの種類:RSVpreFワクチン

現在日本で承認されている妊婦向けRSワクチンは、「RSV前融合Fタンパク質(RSVpreF)」を使ったワクチンです。

Fタンパク質は、ウイルスが細胞に侵入するための“鍵”のような構造で、この部分に抗体がつくことで、ウイルスが体内で増えにくくなります。

RSウイルスワクチンの効果

大規模臨床試験(MATISSE試験など)では、

  • 生後3か月までの重症RSウイルス感染を70〜80%減らす
  • 生後6か月までの重症化・入院リスクを大幅に下げる

といった結果が得られています 。実際の医療現場でも、母体ワクチン・抗体製剤が導入された地域では、乳児のRS関連入院が半数以下になった、という報告もあります。

RSウイルスワクチンの安全性

大規模試験では、

  • 妊婦さん
  • 生まれた赤ちゃん

いずれにおいても重大な安全性の問題は認められていません

副反応としては、

  • 接種部位の痛み
  • 倦怠感・頭痛
    など、一時的で軽度のものが多いとされています。

日本でのスケジュール(2026年〜予定)

  • 対象:妊婦さん(妊娠24〜36週)
  • 目的:生まれたばかりの赤ちゃんをRS重症化から守る
  • 費用:定期接種化により公費(無料または大幅軽減)へ

※今後の接種対象、接種接種スケジュールなどは、厚生労働省からの正式な発表をご確認ください。
※情報が判明次第、本ページもアップデート予定です。

抗体製剤(ニルセビマブ)との違い

予防法誰に投与?仕組み効果期間
妊婦RSワクチン(RSVpreF)妊婦妊婦が抗体を作り赤ちゃんに移行生後数か月
抗体製剤(ニルセビマブ)赤ちゃん完成された抗体を赤ちゃんに直接投与1シーズン(約5か月)

どちらも「赤ちゃんをRSから守る」ことが目的ですが、アプローチが異なります。

まとめ

RSウイルスは、

  • 多くの赤ちゃんがかかる
  • しかし重症化すると呼吸困難・無呼吸など命に関わりうる

という特徴を持つ感染症です。

今回の妊婦ワクチンの導入は、「赤ちゃんが生まれた日から守られる」という、とても大切な決定だと思います。

いろはなクリニックでは、

  • 最新の予防接種情報の提供
  • 妊婦さんの不安への丁寧な説明

を通して、妊娠期から赤ちゃんの健康を守るお手伝いをしていきます。

参考文献