人参養栄湯(にんじんようえいとう)は、体力が落ちている方の疲労感、食欲不振、手足の冷え、貧血傾向、病後の衰弱などに用いられる漢方薬です。
「風邪や病気のあとから元気が戻らない」
「食べられず、だるさが続く」
「年齢とともに体力の落ち込みを感じる」
といった場面で使われます。
こんな症状に使われます
- 疲れやすい、だるさが続く
- 病後・術後に体力が戻らない
- 食欲がない、食が細い
- 手足が冷える
- 貧血傾向で顔色が悪い、ふらつきやすい
- ねあせがある
- 高齢になって体力の低下を感じる
- 慢性的に元気が出ず、弱りやすい
人参養栄湯は、体力が落ち、気力も食欲も低下しているような状態に合いやすい処方です。
単に「疲れたから使う」というより、消耗して回復しきれない方を、じっくり立て直すイメージの漢方といえます。
食欲がない、体がだるい、手足の冷えや貧血がある方、年齢を感じやすくなった方に適しています。
中医学的な見方
中医学では、人参養栄湯は主に「気血両虚(きけつりょうきょ)」、つまり気と血の両方が不足した状態に用いられる代表的な処方の一つです。
「気」は活動するエネルギー、「血」は全身を養う栄養や潤いのイメージで、これらが不足すると、疲労感、食欲低下、顔色不良、冷え、動いたあとの息切れ、回復力の低下などが現れやすくなります。
また、胃腸の働きが弱って十分に栄養を取り込めないと、さらに気血が不足しやすくなります。
人参養栄湯は、胃腸を支えながら気血を補い、冷えや消耗を改善していく処方です。
「弱っている体を無理に刺激する」のではなく、足りないものを補って立て直すタイプの漢方と考えると分かりやすいです。
成分と作用
医療用の人参養栄湯は、地黄、当帰、白朮、茯苓、人参、桂皮、遠志、芍薬、陳皮、黄耆、甘草、五味子の12種類の生薬で構成されています。
それぞれの役割を分かりやすくまとめると、以下のようになります。
- 人参・白朮・茯苓・甘草
胃腸の働きを支え、食欲低下やだるさの改善を助けます。
「食べる力」「消化吸収する力」を補う中心です。 - 当帰・地黄・芍薬
血を補い、顔色不良、貧血傾向、消耗した体の立て直しを助けます。
ふらつきや冷え、乾燥傾向がある方にも合うことがあります。 - 黄耆
体力低下や疲れやすさに使われる生薬で、回復力を支える役割があります。 - 桂皮
体を温め、冷えの改善を助けます。 - 陳皮
胃腸の動きを整え、食欲不振や胃の重たさに配慮します。 - 遠志・五味子
消耗して気力が落ちているとき、心身の働きを支える方向に働く生薬です。
このように人参養栄湯は、胃腸を整える・気を補う・血を補う・冷えに配慮するという働きを一つの処方で兼ね備えています。
そのため、「疲れて食べられず、冷えて、回復しにくい」という状態に特に向いています。
使用上の注意
- 体質や症状に合わない場合は、胃のもたれ、下痢、発疹などが出ることがあります。
- 胃腸が弱く下痢しやすい方では、服用に注意が必要です。
- 妊娠中、授乳中、ほかの漢方薬や内服薬を使用している場合は、事前に医師へご相談ください。
- 漢方薬は「体にやさしい」という印象を持たれやすいですが、体質に合うかどうかが大切です。
- 強い倦怠感や貧血症状の背景に、鉄欠乏性貧血、甲状腺疾患、感染症、悪性腫瘍など別の病気が隠れていることもあるため、必要に応じて西洋医学的な評価も重要です。
「なんとなく弱っているからこれでよい」と自己判断するのではなく、本当に人参養栄湯が合う状態かを見極めたうえで使うことが大切です。
最後に
人参養栄湯は、病後の回復が遅い、疲れやすい、食欲がない、冷えや貧血傾向があるといった、
「体が弱って立て直しが必要なとき」に選ばれる漢方薬です。
しっかり休んでも元気にならない、年齢とともに体力の低下を感じる、
食が細くなってだるさが続くといったお悩みがある方は、一度ご相談ください。
当院について
いろはなクリニックは、岐阜市則武東にある 内科・血液内科・小児科 のクリニックです。
私たちは、「いろ(その人らしさ)」「はな(笑顔・やさしさ・本来の健やかさ)」「ohana(家族や仲間のような支え合いの心)」を大切にし、医療を通じて安心とつながりが育まれる場を目指しています。
症状だけでなく、生活背景や価値観にも目を向けながら、一人ひとりにとって納得感のある医療をお届けします。
小さな不調や迷いの段階でも、どうぞ気軽にご相談ください。

編集・監修者
いろはなクリニック 院長 柴田 悠平
- 医学博士
- 日本内科学会 総合内科専門医・指導医
- 日本血液学会 血液専門医・指導医
- 日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医・指導医