健康診断や病院の受診で「血圧が少し高めですね」と言われたことはありませんか?
でも、その一言に「えっ、何が悪いの?」「すぐに薬を飲まないといけないの?」と戸惑ってしまった方も多いかもしれません。
実際、高血圧は日本人の約3人に1人が抱えているごく身近な病気です。
しかし、自覚症状がほとんどないまま、ある日突然、脳卒中や心筋梗塞を引き起こすこともあるため、「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれています。
このページでは、高血圧とは何か、なぜ問題なのか、どのように対策すればよいのか、皆さんの不安に寄り添いながら、丁寧に解説していきたいと思います。
血圧の数値に一喜一憂するのではなく、あなた自身の体と向き合う大切なきっかけとして、どうぞ最後までお読みいただければ幸いです。
血圧とは?
血圧とは、「血液の流れを生み出す圧力」
血圧とは、心臓が血液を押し出すときに生じる、血管にかかる圧力のことです。
たとえば、ホースで水を撒くときを想像してみてください。
ホースの中の水は、蛇口をひねると勢いよく流れ出ます。
このとき、水の勢い(圧力)にあたるものが「血圧」です。
心臓がポンプで、血管がホース、血液が水に相当します。
血圧の2つの数値:上と下の意味
健康診断や家庭で血圧を測ると、「上が130、下が80」といったように、2つの数値が表示されます。
この2つの値は、それぞれ以下のような意味を持ちます。
血圧の種類 | 医学的な名前 | 何を表しているか |
---|---|---|
上の血圧 | 収縮期血圧 | 心臓がギュッと縮んで血液を押し出すときの圧力 |
下の血圧 | 拡張期血圧 | 心臓がリラックスして血液をため込むときの圧力 |
どちらも重要ですが、特に「上の血圧」は年齢とともに上がりやすく、脳卒中や心筋梗塞のリスクと強く関係しています。
血圧はなぜ変動するのか?
血圧は1日の中でも刻々と変化しています。
安静時には低く、運動や緊張、寒さなどによって一時的に上昇するのは自然なことです。
しかし、常に高い状態が続いていると、血管に負担がかかり続け、動脈硬化が進みます。
血圧に影響を与える主な要素
- 心拍数(心臓の動く速さ)
- 血液量(体内の水分バランス)
- 血管の硬さ(動脈硬化の有無)
- 自律神経の働き(ストレスや睡眠の影響)
- ホルモンのバランス(腎臓や副腎から出る物質)
このように、血圧は実に多くの要素のバランスで成り立っているため、「自分の体の調子を映す鏡」とも言えるのです。
高血圧とは?
高血圧の患者数
日本では、高血圧の患者さんが4,000万人を超えているとされています。これは、成人の約3人に1人が高血圧であるという計算になります。さらに、高血圧が原因とされる年間の死亡数は10万人以上。決して他人事ではありません。
血圧が高い状態が続くと、
- 脳卒中
- 心筋梗塞
- 心不全
- 慢性腎臓病
- 認知症 など
さまざまな深刻な病気のリスクが高まります。
高血圧には2つのタイプがあります
高血圧は、大きく分けて次の2つに分類されます。
- 本態性高血圧:原因がはっきりしないタイプで、全体の約90%を占めます。体質に加え、塩分の取りすぎ、運動不足、肥満、喫煙、ストレスなどが関係していると考えられています。
- 二次性高血圧:特定の病気や薬の影響で起こるもので、約10%にみられます。腎臓病、ホルモン異常、睡眠時無呼吸症候群などが原因として知られています。
特に若い方や突然血圧が高くなった方では、二次性高血圧の可能性も考慮する必要があります。
血圧の目標値は年齢によって異なります
日本高血圧学会のガイドラインでは、以下のような目標が示されています。
- 75歳未満の方
診察室血圧:130/80未満
家庭血圧:125/75未満 - 75歳以上の方
診察室血圧:140/90未満
家庭血圧:135/85未満
「家庭血圧」とは、ご自宅で測った血圧のこと。実は、病院で測るよりも日々の体の状態を反映しやすく、脳卒中や心筋梗塞などの予防にも効果的です。
「仮面高血圧」ってご存じですか?
診察室では正常でも、自宅では血圧が高い状態を「仮面高血圧」といいます。見逃されがちですが、このタイプも心臓や脳へのダメージが進行していることがあります。特に以下のようなケースでは要注意です。
- 朝起きた時や夜間に血圧が高くなる
- 日中にストレスや仕事で血圧が上がる
- 睡眠中の呼吸障害(睡眠時無呼吸)を指摘されたことがある
家庭血圧を毎日測定することで、こうした異常にもいち早く気づけます。
高血圧の治療
血圧を下げるためにできること
高血圧は、生活習慣の改善で予防・改善が可能です。次のようなことを意識してみましょう。
- 減塩:1日6g未満を目指しましょう。平均で5mmHg程度の降圧効果があります。
- 野菜や果物の積極的な摂取
- お酒はほどほどに:節酒で2〜3mmHgの降圧効果
- 適正体重の維持:体重1kg減で1mmHgの降圧効果
- 運動習慣:有酸素運動を30分/日、または180分/週以上
- 禁煙
- 質の良い睡眠
- ストレスをためない
- 寒さ対策:冬場の急な血圧上昇を防ぎます
お薬が必要なときは
生活習慣の改善とあわせて、必要に応じて降圧薬を使うこともあります。まずは1種類のお薬から始めて、血圧が下がらない場合は順番に調整していきます。目標は、診察室で130/80mmHg未満、家庭血圧で125/75mmHg未満を目指すことです。
最後に
高血圧は「沈黙の病」とも呼ばれ、自覚症状がないまま進行していきます。
「血圧が高いぐらいで大げさな…」と思われる方もいるかもしれません。しかし、一度合併症が起こってしまうと、その後の生活に大きな支障を来してしまいます。
「たかが高血圧」と思わずに、毎日の測定と、早めの対策で、健やかな未来を一緒に目指しましょう。