血液中の「コレステロール」や「中性脂肪(トリグリセリド)」のバランスが崩れた状態を「脂質異常症」といいます。自覚症状がほとんどないため、健康診断などで初めて見つかることも少なくありません。しかし、放っておくと動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの重大な病気につながるリスクがあります。このページでは脂質異常症について解説をします。
脂質異常症の診断
血液検査で確認します
・基本は空腹時に採血を行い、以下の値を測定します。
- 総コレステロール
- LDLコレステロール(いわゆる「悪玉コレステロール」)
- HDLコレステロール(いわゆる「善玉コレステロール」)
- 中性脂肪(トリグリセリド)
・中性脂肪が400mg/dL以上だった場合などは、「LDL直接法」や「non-HDLコレステロール」で評価します。
脂質異常症の基準値
異常の種類 | 基準値 |
---|---|
高LDLコレステロール血症 | LDL-C 140mg/dL以上 |
境界域高LDLコレステロール血症 | LDL-C 120~139mg/dL |
低HDLコレステロール血症 | HDL-C 40mg/dL未満 |
高トリグリセリド血症 | TG 150mg/dL以上 |
続発性脂質異常症
脂質異常症は、生活習慣だけでなく、他の病気や薬の影響でも起こります。これを「続発性脂質異常症」といい、まずはその原因への対応が必要です。
- 甲状腺機能低下症
- ネフローゼ症候群
- 慢性腎不全
- 糖尿病
- クッシング症候群
- 肥満
- アルコールの過剰摂取
- 妊娠 など
治療の基本は生活習慣の見直し
まずはこの5つから始めましょう
- 食生活の改善
- 運動習慣をつける
- 禁煙する
- アルコールは控えめに
- 適正体重の維持
タイプ別の対策
悪玉コレステロール(LDLコレステロール)が高いタイプ
「悪玉コレステロール」は、血管の壁にたまりやすく、動脈硬化の原因になります。
食事のポイント
- コレステロールの多い食品を控える
卵、魚卵、レバー、バター、チーズ、肉の脂身などはほどほどに。 - 動物性脂肪を控え、植物性脂肪や魚の脂に切り替える
青魚やオリーブオイルはおすすめです。 - 食物繊維をたっぷりとる
野菜、豆類、海藻、きのこ、玄米などを意識して摂りましょう。 - 抗酸化ビタミン(ビタミンC、E、カロテン)をしっかりとる
トマト、かぼちゃ、にんじん、ブロッコリー、ナッツなどがおすすめです。
中性脂肪(トリグリセリド)が高いタイプ
中性脂肪は、糖質のとりすぎや運動不足によって増えます。内臓脂肪も増え、メタボの原因に。
食事のポイント
- 炭水化物(ごはん、パン、麺類)のとりすぎに注意
- 果物・お菓子・ジュースを控える
特に清涼飲料水や甘いおやつのとりすぎはNG。 - アルコールを控える
1日25g(ビール中瓶1本)以内に。 - 中等度の運動を週3回以上、30分以上続ける
ウォーキングやスロージョギングがおすすめです。
善玉コレステロール(HDLコレステロール)が低いタイプ
「善玉コレステロール」は血管を守る働きがあります。少なすぎると、動脈硬化のリスクが高まります。
ポイント
- トランス脂肪酸を避ける
マーガリン、ショートニング、洋菓子、揚げ物などに含まれます。 - 適度な運動を習慣にする
HDLを増やし、中性脂肪も下げる効果があります。 - 禁煙する
喫煙はHDLを下げる最大の原因の一つです。
脂質異常症の薬物療法
生活習慣の改善だけで十分な効果が得られない場合、薬による治療を行います。
タイプ別の治療薬
タイプ | 主な治療薬 |
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LDLコレステロールが高い | スタチン、エゼチミブ、PCSK9阻害薬 |
中性脂肪が高い | フィブラート系薬、EPA製剤 |
HDLコレステロールが低い | 原因疾患の治療、生活習慣改善が基本 |
主な治療薬とその特徴
- スタチン(アトルバスタチンなど)
→ LDLを下げ、心臓病の予防効果が高い
→ 副作用:肝機能異常や筋肉の障害に注意 - エゼチミブ
→ 小腸でのコレステロール吸収を抑える
→ スタチンと併用することも - PCSK9阻害薬(注射薬)
→ 家族性高コレステロール血症などに使う強力な薬
→ 高価だが効果が非常に高い - フィブラート系薬(ベザフィブラートなど)
→ 中性脂肪を下げ、HDLを上げる
→ スタチンと併用する場合は副作用に注意 - EPA製剤(魚の脂由来)
→ 中性脂肪を下げ、炎症を抑える効果も
治療のポイント
- 薬物療法は生活習慣の改善とセットで行うことが大切です。
- 高齢の方や肝臓・腎臓に持病がある方は、副作用に特に注意しましょう。
- 定期的な血液検査や肝機能チェックを続けましょう。