「リンゴ病」という名前を聞いたことがありますか?
これは、正式には「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」といい、子どもによく見られるウイルス感染症の一つです。
2025年7月現在、岐阜県内でも流行しており、感染対策が呼びかけられています。
今回はそんな、伝染性紅斑(リンゴ病)について解説します。
リンゴ病って、どんな病気?
「リンゴ病」という名前は、その特徴的な症状、まるでリンゴのように両ほっぺたが真っ赤になることから、親しみを込めて呼ばれています。
医学的には「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」といい、パルボウイルスB19というウイルスが原因で起こる感染症です。
主に子供に多く、5~9歳がピークで、0~4歳がこれに続きます。
どのように感染するの?
感染の主な経路は「飛沫感染」といわれています。つまり、くしゃみや咳などでウイルスが空気中に広がり、それを吸い込むことで感染します。
- 感染は家族内で広がりやすい一方、学校や職場での大流行はまれです
- 妊婦や免疫が弱い方は、重症化することがあるため注意が必要です
症状の特徴は?
リンゴ病には以下のような特徴的な流れがあります:
- 風邪のような症状(発熱・鼻水・のどの痛みなど)が1週間ほど先に起こる
- その後、両方の頬が赤くなる
- さらに腕や足にレースのような模様の発疹が出る(ときにお腹や背中にも)
※ この発疹が出ているころには、すでにウイルスの感染力はなくなっています。
※ 特徴的な症状が出るころには感染性は消失しているため、現実的に感染予防対策を行うのは難しい疾患です。
大人がかかるとどうなる?
大人が感染すると、子どもと違って頬の赤みや発疹は出にくく、代わりに関節の痛みや微熱が出ることがあります。
とくに女性では関節炎が長引くこともあります。
注意が必要なケースは?
通常の免疫状態の方は数日で自然に良くなる、予後良好な疾患です。
しかし、以下のような人では重症化することがあります。
- 妊婦さん:まれに赤ちゃんに影響を与えることがあります(胎児水腫など)
- 貧血のある方(特に遺伝性球状赤血球症など):血液をつくる力が止まり、急に貧血が悪化することがあります(「無形成発作(aplastic crisis)」といいます)
- 免疫が弱い方:慢性的に貧血が続くことがあります
検査・診断はどうやって行うの?
典型的な症状があれば、問診と診察だけで診断できます。
必要に応じて血液検査(抗体検査やPCR検査)を行うこともありますが、必ずしもすぐには結果が出ません。
治療はどうするの?
原因となるパルボウイルスに対して有効な薬剤はありません。症状に応じた「対症療法」を行います。
- 発熱:解熱薬(アセトアミノフェンなど)
- 関節痛:痛み止め(NSAIDsなど)
※ 重症例では輸血などの投与が必要になることがあり、入院管理となります。
登校・出勤はいつからできる?
感染症法上は、5類定点把握疾患であり、小児科定点の医療機関による報告が必要ですが、学校保健法上は、出席停止扱いの疾患には含まれていません。特徴的な発疹が出るころには感染力がなくなっているため、体調が良ければ、学校や職場を休む必要はありません。
予防するには?
- 手洗い、咳エチケットが大切です
- アルコール消毒が効きにくいウイルスなので、物理的な掃除が効果的です
- ワクチンや予防薬は現在ありません
妊婦さんや免疫が弱い方へ
パルボウイルスは妊娠初期の妊婦さんや免疫が弱い方にとって、まれに重大な影響を及ぼすことがあります。
- 妊婦さんは、流行期には人混みを避け、手洗いをこまめにしましょう
- 免疫不全者、遺伝性球状赤血球症など溶血を起こす可能性がある場合も同様です
最後に
リンゴ病は、子どもにとっては比較的軽い感染症であり、多くの場合、特別な治療をしなくても自然に回復します。
ただし、妊婦さんや貧血のある方、免疫力が低下している方などにとっては、注意が必要なウイルスでもあります。
いろはなクリニックでは、お子さんの発疹や体調の変化ついても、わかりやすく丁寧にご説明いたします。どうぞお気軽にご相談ください。