( 診療案内 )

感染性腸炎

胃腸風邪について

「突然の下痢や吐き気でつらい…」「食べたものが原因かも?」そんな経験はありませんか?
感染性腸炎は、ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体が腸に感染し、下痢や嘔吐、腹痛などを引き起こす病気です。特に子どもや高齢の方は脱水になりやすく、注意が必要です。
このページでは、感染性腸炎の原因、症状、治療について、わかりやすく解説していきます。気になる症状がある方、ご家族が体調を崩された方も、ぜひ参考にしてください。

感染性腸炎とは?

「感染性腸炎」とは、ウイルスや細菌、寄生虫などが原因で腸に炎症が起こる病気のことです。いわゆる「お腹の風邪」と呼ばれることもあります。代表的な症状は以下のようなものです。

  • 下痢(時に水のような便や血便)
  • 吐き気や嘔吐
  • お腹の痛み
  • 発熱

原因となる菌やウイルスは、食べ物や飲み物を通じて体に入ることが多く、特に夏場や冬場に流行します。

原因と感染経路

感染性腸炎の原因には、いくつかのタイプがあります。

  • ウイルス性(ノロウイルス・ロタウイルスなど):冬場に多く、子どもや高齢者で重症化しやすいです。
  • 細菌性(カンピロバクター、サルモネラ、大腸菌など):食べ物や水が原因のことが多く、夏場に多発します。
  • 寄生虫性(アメーバ赤痢など):海外渡航や衛生環境が整っていない場所での感染が多いです。

また、以下のような経路でうつることがあります。

  • 感染者の便や吐しゃ物に触れた手から
  • 感染した食べ物や水を口にしたとき
  • 調理器具やタオルなどを共有したとき

どんな症状が出るの?

症状は原因となる病原体によって異なりますが、大きく以下の3タイプに分かれます。

小腸型(ウイルスや毒素による)

  • 水のような下痢
  • 吐き気・嘔吐
  • 発熱は少ない

大腸型(細菌が腸の壁に入り込む)

  • 血が混じった便や粘液便
  • 激しい腹痛
  • 発熱

全身型(菌が血液に入る)

  • 高熱
  • お腹の痛み
  • 下痢が出ないこともあります

ウイルス迅速検査

感染性腸炎を疑われるとき、「ウイルスの検査をするかどうか」は症状や年齢、全身状態によって判断します。

検査の種類

  • 迅速抗原検査という方法で、便の中にウイルスの成分があるかを調べます。
  • 結果は数十分で出るため、外来でも検査が可能です。
  • 対象はノロウイルスロタウイルスです。

検査の保険適応について

ノロウイルスやロタウイルスの検査は、すべての患者さんに保険でできるわけではありません。以下のような条件があるため、必要な場合に限り実施されます。

  1. 3歳未満のお子さん
  2. 65歳以上の高齢者
  3. がんなどで治療中の方
  4. 臓器移植を受けた方
  5. 免疫抑制剤や抗がん剤を使用中の方

健康な4歳以上の患者さんの場合は、保険適応外となることがあります。ご希望があれば自費での検査も可能ですので、ご相談ください。

検査しないこともあるの?

ノロウイルスやロタウイルスの感染性腸炎は、たとえ原因が分からなくても、症状や流行状況からある程度予測ができます。また、特別な治療薬があるわけではなく、基本は脱水予防と安静が治療の中心です。そのため、症状が軽ければ検査を行わずに経過観察することも多くあります。

治療方法

感染性腸炎の多くは自然に回復する病気ですが、次のような対処が必要です。

水分補給が最優先!

下痢や嘔吐で失われた水分と電解質(ナトリウムやカリウム)を補うことが最も大切です。

  • スポーツドリンクや経口補水液(OS-1など)をこまめに少量ずつ飲みましょう。
  • 飲めないときは無理をせず、医療機関での点滴が必要になることもあります。

吐き気が強いときは制吐剤(吐き気止め)

強い吐き気があると、水分すらとれなくなってしまいます。そんなときは「制吐剤(せいとざい)」と呼ばれるお薬を使用することがあります。

  • 主な薬:メトクロプラミド(プリンペラン®)、ドンペリドン(ナウゼリン®)など
  • 嘔吐が続くときには座薬や点滴薬を使用することもあります。

※自己判断で市販の吐き気止めを使うことは避け、必ず医師に相談しましょう。

食事は無理をしない

胃腸が弱っているときは、無理に食べる必要はありません。水分がとれるようになってから、以下のような消化のよいものから始めましょう。

  • おかゆ、うどん、味噌汁(具なし)
  • バナナ、すりおろしリンゴ、ゼリー
  • 油っこいもの、乳製品、生ものは避けましょう

下痢止めは基本的に使いません

感染性腸炎のときは、体が原因となるウイルスや細菌を外に出そうとして下痢を起こしています。無理に下痢を止めてしまうと、回復を遅らせることがあります。

  • 必要と判断したときのみ、下痢止めを使うことがあります。

抗菌薬(抗生物質)は必要?

原因がウイルスである場合、抗菌薬は効きません。細菌による感染が疑われる場合でも、軽症であれば抗菌薬を使わないことが多く、必要に応じて医師が判断します。

血便や高熱がある場合など、重症のときには使用することがあります。

感染を防ぐために大切なこと

  • 手洗いは石けんを使って、こまめに行いましょう(特にトイレや調理の前後)
  • 食べ物は十分に加熱し、生肉は避ける
  • 吐しゃ物や便を処理するときは使い捨て手袋を使用し、消毒剤で拭き取りましょう
    (ウイルス性腸炎にはアルコールが効かないものが多いため、次亜塩素酸を使用します)

まとめ

感染性腸炎はつらい症状を引き起こしますが、多くは適切な水分補給と安静で回復します。ただし、重い症状がある場合は早めに受診することが大切です。また、ご家族内での感染拡大を防ぐためにも、日頃の衛生管理が重要です。

いろはなクリニックでは、お腹のトラブルについても丁寧にご相談をお受けしています。気になる症状がある方は、どうぞお気軽にご来院ください。