( 診療案内 )

免疫性血小板減少症

自己免疫で血小板が壊される病気

免疫性血小板減少症(ITP)は、自分の体が自分の血小板を攻撃してしまうことで、出血しやすくなる病気です。
名前は少し難しいですが、適切に治療すれば、ほとんどの方が日常生活を問題なく送ることができます。
このページでは、ITPとはどんな病気か、どんな治療法があるのかを、できるだけわかりやすくご紹介します。
ご自身やご家族の体の変化が気になる方は、ぜひ最後までお読みください。

ITPってどんな病気?

私たちの体には、出血を止める働きをもつ「血小板」という細胞があります。
免疫性血小板減少症(ITP)は、この血小板が免疫の異常によって減ってしまい、出血しやすくなる病気です。

ちょっとしたことであざができたり、鼻血が止まりにくくなったり…。
「最近、出血しやすくなったかも」と感じたことはありませんか?

主な症状

  • あざができやすい(特に打った覚えがないのに…)
  • 鼻血や歯ぐきの出血が続く
  • 月経が長引く、量が多い
  • 小さな赤い点々(点状出血)が皮膚に現れる

軽症の場合は命にかかわる病気ではありませんが、重症の場合は内臓や脳に出血するリスクもあるため、適切な診断と治療が重要です。

なぜ血小板が減るの?

ITPは、自分の免疫が血小板を「異物」と間違えて攻撃してしまう自己免疫の病気です。
その結果、血小板が壊されてしまい、数が減ってしまうのです。

原因は完全には解明されていませんが、ウイルス感染後や、ピロリ菌が関係していることが示されています。

診断方法

ITPは、「他の病気がないか」を丁寧に調べることで診断されます。これを除外診断といいます。

主な検査内容

  • 血液検査(血小板の数や状態を確認、血小板が低下するその他の疾患の除外)
  • 骨髄検査(その他の疾患の可能性を除外する)
  • ピロリ菌の検査(呼気・便・血液などで調べます)

※骨髄穿刺は、いろはなクリニックでは実施しておりません。精密検査が必要と判断した際は、岐阜市内の血液内科基幹病院をご紹介させていただきます。

治療方針

治療の方針は、「血小板の数」と「出血の程度」によって決まります。

血小板が比較的多い(3万/μL以上)で出血がない場合

経過観察(定期的に血液検査)

血小板が少ない(2万/μL未満)、もしくは出血がある場合

薬による治療が必要です。

主な治療法

ピロリ菌の除菌

ピロリ菌がいる方は、除菌治療だけで血小板が増えることがあります(日本では約6割の方に効果あり)。
→ 抗生物質や胃薬などを組み合わせた、ピロリ除菌薬を1週間内服します

ステロイド薬(副腎皮質ホルモン)

血小板を壊す免疫の働きを抑えます。
→ 多くの患者さんに効果がありますが、長期使用には注意が必要です。

ステロイド薬の主な副作用:

  • 糖尿病
  • 胃腸障害
  • 体重増加・むくみ など

そのため、少ない量で維持するか、早めに別の治療へ切り替えることもあります。

TPO受容体作動薬(トロンボポエチン製剤)

血小板を作る力を助けるお薬です。
→ 飲み薬や注射薬があり、約8割の方に効果があります。副作用は比較的軽いとされています。

リツキシマブ

免疫の働きを調整する点滴治療。
→ 約5~6割の方に効果がありますが、長期的に感染症には注意が必要です。

脾臓(ひぞう)の摘出手術(脾摘)

脾臓は血小板を壊す場所の一つであり、これを取ることで血小板が増えることがあります。
→ 効果は高い一方、感染症や血栓のリスクもあるため、慎重に検討が必要です。

ITPは「指定難病」です

ITPは厚生労働省が認める「指定難病」の一つです。
重症度などの条件を満たすと、医療費の助成制度が使える場合があります。
いろはなクリニックは難病指定医療機関であるため、難病の医療費助成を受けて頂くことが可能です。
申請には医師の診断書が必要ですので、ご相談ください。

妊娠中の対応

妊娠中でも、必要に応じてステロイドや免疫グロブリン療法で安全に治療できます。
ただし、一部の薬は妊娠期間中には使用が出来たいため、注意が必要です。
出産時には血小板の数に応じて、分娩方法(自然分娩・帝王切開)を選択する必要があります。

ITPと向き合うために

ITPは、長期にわたってつきあっていくことが多い病気です。
適切な治療や生活管理によって、多くの方が日常生活を問題なく送っています。

当クリニックでは、患者さん一人ひとりに合った治療法をご提案し、不安や疑問にも丁寧に寄り添いながらサポートしていきます。

よくある質問

Q:ITPは感染しますか?
→ 感染症ではありません。人から人へうつることはありません。

Q:完治することはありますか?
→ 完全に治る方もいますが、経過観察や治療が長引く方もいます。少しずつ上手に付き合っていくことが大切です。

Q:疲れやすさやだるさと関係ありますか?
→ 血小板は「出血」に関係する細胞なので、貧血のような疲れやすさとは直接の関係は少ないですが、心配な場合は医師に相談してください。

まとめ

  • ITPは免疫の異常で血小板が減る病気です
  • 軽症であれば経過観察、必要があれば薬で治療します
  • ピロリ菌の除菌が効くこともあります
  • 治療には選択肢があり、体質や生活に合わせて選べます
  • 妊娠中でも安全な治療が可能です
  • 公的な医療費助成制度もあります

いろはなクリニックでは、血小板減少の患者さんの診断、治療を行っています。
不安なことや心配なことなど、いつでもご相談頂ければ幸いです。