( 診療案内 )

インフルエンザ

冬に流行する感染症の代表格

毎年、寒くなる季節になると話題になる「インフルエンザ」。
テレビやニュースで「今年も流行が始まっています」といった報道を目にして、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

「普通の風邪とどう違うの?」「病院に行くタイミングは?」「薬は必ず飲んだ方がいいの?」
そんな疑問にお答えしながら、インフルエンザについて、わかりやすく解説していきます。

インフルエンザとは?

インフルエンザとは、インフルエンザウイルスによって引き起こされる感染症です。毎年冬に流行し、突然の高熱や全身の痛み、だるさなど、風邪よりも強い症状が出るのが特徴です。

インフルエンザウイルスの種類

インフルエンザウイルスには、大きく分けて A型・B型・C型 の3種類があります。そのうち、A型とB型が人に感染し、季節性インフルエンザとして毎年流行を繰り返しています。

  • A型インフルエンザウイルス
    感染力が非常に強く、広い範囲で大流行(パンデミック)を起こすことがあります。表面には「ヘマグルチニン(HA)」と「ノイラミニダーゼ(NA)」という2つのたんぱく質があり、これらの組み合わせにより「H1N1型」「H3N2型」など、さまざまなタイプが存在します。
  • B型インフルエンザウイルス
    A型ほどではないものの、毎年流行し、特に子どもや若年層での感染が多くみられます。B型には「ビクトリア系統」と「山形系統」の2つの流行系統があります。
  • C型インフルエンザウイルス
    症状が軽いため、一般的な流行の原因にはなりません。

なぜ毎年流行するの?

インフルエンザウイルスは「変異しやすいウイルス」です。ウイルスの表面にあるHAやNAの形が毎年少しずつ変わるため、前の年に感染したりワクチンを打っていても、免疫がうまく働かないことがあります。これが、毎年ワクチンの中身が変わる理由でもあります。

豚や鳥のインフルエンザって?

インフルエンザウイルスは、人だけでなく鳥や豚にも感染します。特に、豚は「人型」「鳥型」「豚型」すべてのウイルスに感染するため、体の中でウイルス同士が混ざって新型インフルエンザが生まれることがあります。

2009年には、豚由来のウイルスが人に感染して「新型インフルエンザ(H1N1)」として世界的な流行を起こしました。現在ではこのウイルスも季節性インフルエンザの一部として扱われています。

インフルエンザの症状

インフルエンザの特徴は、突然の高熱と全身の強いだるさです。通常の風邪とは異なり、全身に症状が現れるのが特徴です。

主な症状

  • 高熱(38~40度):発症から数時間で急に上がります
  • 全身のだるさ(倦怠感)
  • 頭痛・関節痛・筋肉痛:インフルエンザ特有の「節々の痛み」
  • のどの痛み、咳、鼻水
  • 悪寒(寒気がして震える感じ)

子どもでは、おう吐や下痢などの消化器症状が出ることもあります。高齢の方や持病のある方では、熱が上がらずに「なんとなく元気がない」「食欲がない」といった形で始まることもあります。

症状の経過

インフルエンザの症状は、発症から1〜2日目にピークを迎え、その後3〜5日で徐々に回復します。ただし、咳だけは長引くことがあり、1~2週間以上続くこともあります。

検査と診断

インフルエンザかどうかはどう判断する?

インフルエンザの診断は、「流行状況」「症状」「接触歴(家族や職場の人がかかっているか)」などを総合的に見て行います。

検査の種類

  1. 迅速検査(抗原検出キット)
    鼻の奥を綿棒でこすってウイルスのたんぱく質を調べる検査です。15分程度で結果が出ます。
    ただし、発症してすぐはウイルス量が少ないため、陽性でも確定、陰性でも否定はできないことがあります。
  2. インフルエンザ・コロナ同時検査キット
    一度の検査でインフルエンザと新型コロナウイルスの両方を調べることができます。症状が似ているため、流行状況に応じて行います。
  3. PCR検査(精密検査)
    インフルエンザのウイルス遺伝子を検出する検査ですが、医療機関ではあまり一般的ではありません。研究機関や特殊な状況で使われます。

治療について

治療の基本は?

インフルエンザは、体力と免疫力があれば自然に治る病気です。ただし、症状が重い場合や合併症のリスクがある場合には、抗インフルエンザ薬を使うことで早めの回復が期待できます。

抗インフルエンザ薬の種類

薬の名前特徴投与方法
タミフル最も一般的1日2回×5日間(内服)
リレンザ吸入薬1日2回×5日間
イナビル1回吸入のみでOK吸入薬(1回)
ゾフルーザ1回だけの内服内服薬(1回)
ラピアクタ点滴で使える入院時などに使用

これらの薬は、発症から48時間以内に使うと最も効果的です。特に以下の方は、早期治療が推奨されます。

  • 高齢者(65歳以上)
  • 乳幼児(2歳未満)
  • 妊婦・産後2週間以内の方
  • 慢性の病気をお持ちの方(糖尿病、心臓・肺・腎臓・肝臓の病気、がんなど)
  • 免疫が弱っている方(治療中の方など)

解熱鎮痛剤について

熱や痛みがつらい時に使用する解熱鎮痛剤ですが、アセトアミノフェンが安全です。小児に対しては、アスピリンやボルタレン(ジクロフェナク)などは使用しないようにしましょう。

インフルエンザに使用する漢方薬

症状が比較的軽い方や、自然な方法での症状緩和を希望される方には、以下の漢方薬も処方されることがあります。

  • 麻黄湯(まおうとう):発熱、寒気、関節痛などに
  • 銀翹散(ぎんぎょうさん):のどの痛み、咳、発熱に

予防とワクチン

日常でできる予防策

  • 手洗い・うがいをこまめに
  • マスク着用
  • 十分な睡眠・栄養をとる
  • 人混みを避ける(特に流行期)

ワクチンの効果と接種時期

インフルエンザワクチンは、発症そのものを防ぐだけでなく、重症化を防ぐ効果があることが分かっています。

  • 接種後、2週間ほどで効果が出始め、約5カ月間持続します
  • 毎年11月中旬までに接種を終えるのが理想的です

特にワクチン接種がすすめられるのは、以下のような方です

  • 65歳以上の方
  • 基礎疾患(心臓・肺・腎臓・肝臓・糖尿病など)がある方
  • 妊婦さん
  • 医療・介護関係、保育・教育職など、人と接する機会の多い方

ご家族に感染者が出たとき

インフルエンザにかかったご家族がいると、同居している人にも感染するリスクが高まります。特に重症化しやすい人が家族にいる場合には、予防内服を行うことが可能です。
(予防内服は保険適応外となるため、自費診療となります)

まとめ

いろはなクリニックでは、症状に応じた丁寧な診療と、患者さんの希望に合わせた治療選択をご提案しています。

「これってインフルエンザかも?」「ワクチンはいつ受けたら?」
そんなときは、どうぞお気軽にご相談ください。