夏になると増えてくるウイルス感染症のひとつに、「ヘルパンギーナ」があります。特に小さなお子さんを中心に見られる病気で、高熱と口の中の痛みが主な症状です。
ヘルパンギーナの原因と感染経路
ヘルパンギーナの原因は、コクサッキーウイルスA群(とくにA4型)というウイルスです。感染力が強く、飛沫(くしゃみ・咳)や接触(おもちゃや手指など)によって広がります。
- 潜伏期間(感染から発症までの期間):2〜4日程度
症状の特徴
ヘルパンギーナは、次のような特徴的な症状で始まります。
- 突然の高熱(38〜40度)が出る
- 熱は2〜4日ほど続く
- のどの奥(軟口蓋や口蓋垂のあたり)に水ぶくれや潰瘍(ただれ)ができる
- 口の中が痛くて、食べたり飲んだりするのがつらくなる
- よだれが増える、機嫌が悪くなる などの様子が見られることも
※ヘルパンギーナでは、体に発疹は出ません。ただし、同じ時期に流行する手足口病と混合して、両方の症状が出ることもあります。
診断について
- 基本的には、高熱と口の中の水ぶくれ・潰瘍、さらに流行状況から診断します。
- 通常は特別な検査は必要ありませんが、まれにウイルス検査を行うこともあります。
注意したい合併症
ヘルパンギーナはほとんどの場合、自然に回復する病気ですが、以下のような症状には注意が必要です。
- 熱性けいれん(高熱によるひきつけ)
- 脱水(水分が取れずぐったりする)
- 哺乳・食事の拒否
- ごくまれに、急性心筋炎や無菌性髄膜炎などを起こすことがあります。
治療
ヘルパンギーナには、特効薬はありません。対症療法(症状を和らげる治療)が中心となります。
おうちでできること
- 水分補給が最優先:こまめに少しずつ飲ませましょう(冷たい飲み物、ゼリー飲料などが◎)
- 食事は無理に取らせなくてもOK:のどごしのよいものを少しずつ
- 氷枕やアイスノンなどを使用して、快適な環境をつくる
- 高熱でつらそうなときは、解熱剤の使用も検討
いつ受診したらいい?
次のようなときは、医療機関の受診をおすすめします。
- 高熱が3日以上続く
- 水分がほとんど取れない
- ぐったりしている、顔色が悪い
- けいれんを起こした
- 発疹も出てきた場合(手足口病などとの鑑別が必要)
出席停止は?
ただヘルパンギーナは、学校保健安全法で「第三種学校伝染病」に指定されており、「発熱や喉頭・口腔の水疱・潰瘍を伴う急性期は出席停止、治癒期は全身状態が改善すれば登校可」とされています。
すなわち、子どもが下記のような状態になったら、登園・登校可の目安と考えられます。
- 熱が下がって24時間以上経過
- 喉の水疱が消失し、痛みが気にならなくなった
- 体調が回復して元気
- 十分に食事が摂れる
最後に
ヘルパンギーナは夏によくあるウイルス性の風邪のひとつです。つらそうに見えることもありますが、多くの場合、数日で回復します。お子さんの様子をよく観察しながら、無理せず、ゆっくり休ませてあげてください。
心配な症状がある場合は、いつでもご相談ください。