今年の特徴:「流行入り」が例年より2か月早く
例年は11月下旬〜12月に立ち上がるインフルエンザですが、今年は全国各地で9月から流行の兆しが見られています。青森や長野をはじめ、学級閉鎖や休校といった事例がすでに出ており、例年との違いがはっきりしています。
- 青森県:第35週(8月25〜31日)の定点患者数が 1.23人で、過去と比べても非常に早い立ち上がりと発表。
- 長野県:第36週(9月1〜7日)の定点患者数は 1.47人。長野市では4校で学級・学年閉鎖。
- 福岡県:定点は 0.46人と基準未満ですが、福岡市や北九州で高校・中学校の学級閉鎖や休校が発生。報道ベースでは「スポット的な流行」との専門家コメント。
- 愛知・三重:三重県亀山市の中学校で学年閉鎖(198人中43人欠席)、愛知県内の幼稚園・こども園でも学級閉鎖が発生。ただし東海3県の定点数値はまだ基準未満。
- 岐阜県:県感染症情報システムでは9月第1週時点で流行入りには至っていません。昨シーズン(2024/25)は12月下旬に警報が出て、2月中旬に解除されています。
なぜ9月から流行が起きるのか?
「インフルエンザといえば冬の病気」というイメージを持つ方が多いと思います。ところが今年は、まだ暑さの残る9月から各地で流行の兆しが見られます。なぜこんなにも早く広がり始めているのでしょうか。その背景には、いくつかの要因が重なっていると考えられます。主な理由として、以下の点が挙げられます。
- 猛暑+エアコン使用:閉め切った室内で乾燥しやすく、ウイルスが長時間生存しやすい。
- 体の抵抗力低下:夏バテ・睡眠不足で免疫機能が落ちやすい。
- 学校再開で接触増加:新学期により一気に広がる。
- 検査体制の変化:コロナと同時に検査するケースが増え、潜在的なインフルが早く可視化されやすくなった。
世界の状況(WHOの報告)
日本の早い流行は世界の動きとも関連しています。WHOは毎週、世界の呼吸器感染症の状況を報告していますが、2025年9月時点では「低〜中等度」とされています。北半球の秋冬に向けて、今後の増加が警戒されています。
- WHOインフルエンザアップデート(No.542, 2025年9月3日)によると、世界全体では 「低〜中等度の活動性」。
- 主流株は A(H1N1)pdm09、A(H3N2)、B(Victoria系)。
- 南半球の冬(6〜8月)で一部の国は中等度の流行を経験。北半球もこれから増加に向かう可能性がある。
- SARS-CoV-2との同時流行にも注意が必要と指摘されています。
岐阜県の状況
私たちの暮らす岐阜県では、まだ流行基準には達していません。ただし昨シーズンは12月に警報が出て2月まで続いており、今年も注意が必要です。全国的な早期流行を踏まえると、秋口からの立ち上がりを意識して準備をすることをお勧めします。
予防の基本
流行の時期を迎える前に、まずは日常生活の中でできることをしっかり実践しましょう。手洗いや咳エチケット、室内の加湿・換気はシンプルですが非常に効果的です。
- 手洗い・咳エチケット・マスク
- 室内加湿(40–60%)と換気
- 十分な睡眠・栄養・水分補給
- 家庭・学校での タオルや食器の共用回避
いろはなクリニックの予防接種について
インフルエンザの流行に備えるうえで、ワクチン接種は有効な手段です。当院でも10月から接種を開始予定で、9月中に予約を開始します。抗体がつくまでに時間がかかるため、10月接種で冬の流行に備えるのが最適です。
- 従来のワクチン他、小児向けの点鼻ワクチン(フルミスト)も対応予定です。
- 予約開始の際は改めてHP、Instagramなどでお知らせします。
- 接種後、概ね2週間で効果が現れますので、10月接種で年内の流行に備えることをお勧めしています。
まとめ
- 青森・長野を中心に、例年より2か月早い流行入り。福岡・東海でも学級閉鎖が相次いでいます。
- 背景には猛暑環境・免疫低下・学校再開・検査体制の変化。
- WHOは世界全体を「低〜中等度」としていますが、北半球はこれから本格的に増加へ。
- 岐阜県はまだ流行期入り前ですが、昨季より早期の流行に要注意。
- 早めのワクチン接種+基本的な感染対策で、この冬を安心して迎えましょう。
主な出典
- 青森県庁「2025年第35週 季節性インフルエンザ 流行入り」発表資料
- 長野県「感染症発生状況 2025年第36週」発表資料
- 岐阜県「感染症発生動向調査」リアルタイム情報(2025年9月11日更新)
- 岐阜県「流行警報発表・解除の経過(2024/25シーズン)」
- NIID(感染症研究機関)「ARIサーベイランス」解説・週報
- WHO「Influenza Update No.542」(2025年9月3日)