今年の特徴:「流行入り」が例年より約1か月早い
例年は11〜12月に立ち上がるインフルエンザですが、今年は9月から全国各地で流行の兆しが見られています。
厚生労働省の感染症週報(第40週、10月10日公表)によると、全国平均で定点あたり報告数が1.00を超え、2025年10月3日付で「全国的な流行シーズン入り」が公表されました。
これは、過去20年で2番目に早い流行入りです。
この時期の流行は、ここ数年でも非常にまれであり、「秋型の早期流行」が全国的に注目されています。
なぜ今年は早く流行しているのか?
今年の早い立ち上がりには、いくつかの要因が重なっています。
- 猛暑+エアコン使用:閉め切った室内で乾燥しやすく、ウイルスが長時間生存しやすい。
- 体の抵抗力低下:夏バテ・睡眠不足で免疫機能が落ちやすい。
- 学校再開で接触増加:新学期により一気に広がる。
- 検査体制の変化:コロナと同時に検査するケースが増え、潜在的なインフルが早く可視化されやすくなった。
WHO 最新アップデート(No. 547)による世界動向
WHO の Influenza Update No. 547(週39:9月28日終週)によれば、次のような傾向が報告されています:
- 世界全体で インフルエンザ活動性は低水準。SARS-CoV-2 の活動性が比較して相対的に優勢。
- インフルエンザ A 型が引き続き優勢を維持。
- 北半球(温帯・亜熱帯地域)では、インフルエンザ陽性率は全体的に低レベルで安定しており、大幅な上昇はまだ観察されていない。
- ただし、アジア地域では A(H3N2) の割合が比較的目立つ報告あり。
- SARS-CoV-2 の陽性率上昇傾向が報告され、複数の国で10%超の報告例も見られることから、インフルエンザとコロナウイルスとの同時流行リスクにも注意が必要。
- RSV(呼吸器合胞体ウイルス)も一部地域で陽性率の上昇を示しており、複数ウイルスの共存・競合動態が注目されている。
この WHO 情報を踏まえると、「世界的にはまだインフルエンザ流行期には至っていない」状況ですが、北半球の秋冬が近づく中で上昇基調に転じる可能性は高いと見られます。
岐阜県の状況
私たちの暮らす岐阜県でも、10月に入り一部地域で学級閉鎖などが報告されています。
県の感染症情報センターによると、第41週(10/6〜10/12)時点で報告数が上昇傾向にあり、今季の立ち上がりが例年より早いことがうかがえます。
なお、昨年(2024/25シーズン)は以下のような推移でした。

週(2024–25年) | 定点あたり報告数 | 状況 |
---|---|---|
第44週(10/28〜11/3) | 0.47 | 散発的報告(流行前) |
第47週(11/18〜11/24) | 1.13 | 流行入り(基準1.0超) |
第50週(12/9〜12/15) | 10.73 | 注意報レベル到達 |
第52週(12/23〜12/29) | 25.54 | 流行ピーク前半 |
第2週(2025/1/6〜1/12) | 31.64 | 警報レベル(ピーク) |
第5週(1/27〜2/2) | 15.08 | 収束期 |
第9週(2/24〜3/2) | 2.83 | 警報解除レベル |
出典:岐阜県感染症情報センター「感染症発生動向調査(2024年度第44週〜2025年第9週)」
昨年データからは、12月に注意報 → 1月上旬に警報 → 2月に収束という典型的な流行カーブが見られます。
今年はこれより約1か月早いペースで立ち上がりつつあり、早めの備えが重要です。
「定点あたり1.0人」が流行基準になる理由
日本では、全国約5,000の小児科・内科などが「定点医療機関」としてインフルエンザ患者数を毎週報告しています。
この1医療機関あたりの平均患者数(定点あたり報告数)が、1.0人を超えると「流行期入り」と判断されます。
これは国立感染症研究所(現・国立健康危機管理研究機構)の長期データ分析に基づき、
「地域全体で感染が広がり始める明確な兆候」が確認される目安として設定されたものです。
- 1.0未満:散発的発生(流行前)
- 1.0以上:流行入り(感染拡大傾向)
- 10.0以上:注意報レベル(地域的流行)
- 30.0以上:警報レベル(大規模流行)
出典:国立感染症研究所「インフルエンザ流行レベル判定について」
ワクチンと予防のポイント
- 今季ワクチン株(3価)
- A/ビクトリア/4897/2022(H1N1)
- A/パース/722/2024(H3N2)
- B/オーストリア/1359417/2021(Victoria系)
- 接種時期:抗体がつくまで約2週間かかります。 10〜11月の接種で年末〜年始の流行ピークに備えられます。
- 点鼻ワクチン(フルミスト):小児や注射が苦手な方の選択肢として注目されています。
いろはなクリニックでは、インフルエンザワクチンを実施しております。
ご予約はWeb予約、お電話、受付窓口で取得可能です。
詳細は以下のページをご覧ください。
受診・検査の目安
以下のような症状がある場合は、早めの受診を検討しましょう。
- 38℃以上の発熱、強い倦怠感、関節・筋肉痛
- 咳や喉の痛みが強い
- 高齢者、持病のある方、妊娠中・乳幼児で症状がある
- 呼吸苦・胸痛・意識障害など重い症状
インフルエンザと新型コロナウイルスは症状が似ているため、必要に応じて同時検査を行うことがあります。
抗インフルエンザ薬(タミフル、ゾフルーザなど)は発症後48時間以内に投与すると効果的とされています。
当院の対応
- インフルエンザ予防接種:10月より接種開始しています。予約はWeb、お電話、受付窓口で受付中です。
- 発熱外来:感染対策のため、症状がある患者さんの同線を分けてご案内しています。来院前に以下のページをご確認ください。
まとめ
- 2025年は過去20年で2番目に早い流行入り(全国平均:定点1.0超)
- 昨季の岐阜県は(2024/25)は12月に注意報 → 1月に警報ピーク(定点31.6)、今シーズンは1か月程度早く(11月から12月)ピークが来る可能性があります。
- 抗体がつくまで2週間ほどかかるため、10〜11月のワクチン接種がお勧めです。
- 手洗い・マスク・換気・十分な睡眠で感染予防を。