( 診療案内 )

芍薬(しゃくやく)

血を整え、緊張をゆるめる“やさしい鎮静の生薬”

概要

芍薬(しゃくやく/学名:Paeonia lactiflora)は、血を補いながら、筋肉や内臓の緊張をゆるめ、痛みをやわらげる働きを持つ生薬です。
体を内側から温め、血の巡りを整えつつ、こり・けいれん・腹痛など「こわばり」をやさしく鎮めます。

女性の体調不良(月経痛・冷え・PMSなど)に多く用いられるほか、
ストレス性の胃痛、筋肉のけいれん、神経痛などにも幅広く応用されます。
当帰と並び、「血を補い、めぐらせる」代表的な補血薬として、
いろはなクリニックでは体質改善やストレス関連症状に対してよく処方しています。

基本情報

項目内容
生薬名芍薬(しゃくやく)
学名Paeonia lactiflora
使用部位
性味微寒・苦・酸
帰経肝・脾
分類補血薬(ほけつやく)

主な働き

血を補い、体を内側から整える

芍薬は「血を養う(養血)」作用を持ち、貧血傾向・顔色の悪さ・疲れやすさなど、血虚(けっきょ) による不調を改善します。
当帰や地黄などと併用することで、血液の質を高め、全身に潤いと温かさを与えます。
また、産後・病後など血を失った後の回復にも役立ちます。

筋肉や内臓の緊張をゆるめる

芍薬の大きな特徴は、平滑筋(内臓や血管の筋肉)をゆるめる作用にあります。
お腹の張り、月経痛、胃けいれん、肩こり、腹痛など、「緊張やこわばり」による痛みに効果的です。
代表的な処方「芍薬甘草湯」は、こむら返り・筋肉のけいれんに対する即効性で広く知られています。

血の巡りを促し、痛みをやわらげる

芍薬は、血流を改善して「滞り(瘀血:おけつ)」を解消し、痛みをやわらげます。
当帰や川芎と組み合わせることで、冷えや血行不良による月経痛・頭痛・神経痛を改善します。
血を「増やす」と同時に「動かす」ことで、痛みの根本にアプローチするのが特徴です。

自律神経のバランスを整える

芍薬は「肝(かん)」の働きを穏やかにし、ストレスや情緒の乱れによる不調にもやさしく作用します。
イライラや不安、不眠、ストレス性の胃痛など、心身が“こわばる”タイプの症状を和らげます。
自律神経の緊張をほぐすことで、血と気のめぐりをなめらかにします。

東洋医学的な視点

東洋医学では、芍薬は 「血を補い、肝をやわらげる」 生薬とされます。
肝は血を貯え、情緒や筋肉の動きを調整する臓腑であり、
その働きが乱れると、怒り・緊張・月経痛などが生じやすくなります。

芍薬はこの肝の働きをなだめ、「肝気の滞り(気滞)」と「血の不足(血虚)」 を同時に整え、
ストレスや自律神経の乱れにも穏やかに対応します。

含まれる代表的な漢方処方

これらの処方は、月経関連の不調、冷え、胃腸の緊張、自律神経のアンバランスなどに用いられます。
(実際の処方は、体質や症状をもとに医師が判断します。)

注意点

  • 芍薬は微寒性(やや冷やす性質)があるため、冷えが強い方には温性の生薬(桂枝・当帰など)と併用することが多いです。
  • 長期服用では、体の冷えや便の状態を確認しながらバランスを調整します。
  • 甘草との併用(芍薬甘草湯など)では、むくみや高血圧の有無に注意が必要です。
  • 妊娠中の使用は、時期・体質に応じて医師の判断のもとで行います。

一言メモ

芍薬は「体と心の緊張をほぐす花」。
血を整え、めぐりを良くし、こわばった筋肉や気持ちをやさしくゆるめます。
“美と穏やかさ”を支える、癒しの生薬です。