
今年の特徴:「流行入り」が例年より約1か月早い
例年は11〜12月に立ち上がるインフルエンザですが、今年は9月から全国各地で流行の兆しが見られています。
厚生労働省の感染症週報(第40週、10月10日公表)によると、全国平均で定点あたり報告数が1.00を超え、2025年10月3日付で「全国的な流行シーズン入り」が公表されました。
11月第2週(第45週:11/3~9)には、全国平均で定点あたり 21.82人 にまで上昇しています。
なぜ今年は早く流行しているのか?
今年の早い立ち上がりには、いくつかの要因が重なっています。
- 猛暑+エアコン使用:閉め切った室内で乾燥しやすく、ウイルスが長時間生存しやすい。
- 体の抵抗力低下:夏バテ・睡眠不足で免疫機能が落ちやすい。
- 学校再開で接触増加:新学期により一気に広がる。
- 検査体制の変化:コロナと同時に検査するケースが増え、潜在的なインフルが早く可視化されやすくなった。
WHO 最新アップデート(No. 552)による世界動向
WHO の Influenza Update No. 552(週39:9月28日終週)によれば、次のような傾向が報告されています:
WHOの最新報告によると、週44(11月2日終了)時点で世界的なインフルエンザ活動度は「低〜中等度」であり、北半球・温帯地域でもインフルエンザ陽性率が約10%程度にとどまっています。ウイルス型としては A型が引き続き優勢です。
ただし、地域によっては陽性率30%を超えるところもあり、今後「増加期」の転換が懸念されています。
岐阜県の状況
私たちの暮らす岐阜県では、第45週(令和7年11月3日から11月9日まで)の県内のインフルエンザ患者報告数が、県内全域で定点医療機関当たり10例を超え、インフルエンザ注意報の基準を超えています。
昨年の推移と比較すると、ちょうど1か月ほど流行のピークが前倒しになるペースであり、本格的な流行は11月末から12月初旬になると予想されます

岐阜県感染症情報センターHPより
なお、昨年の定点当たりの報告数推移は以下の通りです。
| 週(2024–25年) | 定点あたり報告数 | 状況 |
|---|---|---|
| 第44週(10/28〜11/3) | 0.47 | 散発的報告(流行前) |
| 第47週(11/18〜11/24) | 1.13 | 流行入り(基準1.0超) |
| 第50週(12/9〜12/15) | 10.73 | 注意報レベル到達 |
| 第52週(12/23〜12/29) | 25.54 | 流行ピーク前半 |
| 第2週(2025/1/6〜1/12) | 31.64 | 警報レベル(ピーク) |
| 第5週(1/27〜2/2) | 15.08 | 収束期 |
| 第9週(2/24〜3/2) | 2.83 | 警報解除レベル |
出典:岐阜県感染症情報センター「感染症発生動向調査(2024年度第44週〜2025年第9週)」
昨年データからは、12月に注意報 → 1月上旬に警報 → 2月に収束という典型的な流行カーブが見られます。
今年は昨年より1か月早い報告数での推移が続いており、ピークが11月まつから12月初旬になる予測です。
「定点あたり1.0人」が流行基準になる理由
日本では、全国約5,000の小児科・内科などが「定点医療機関」としてインフルエンザ患者数を毎週報告しています。
この1医療機関あたりの平均患者数(定点あたり報告数)が、1.0人を超えると「流行期入り」と判断されます。
これは国立感染症研究所(現・国立健康危機管理研究機構)の長期データ分析に基づき、
「地域全体で感染が広がり始める明確な兆候」が確認される目安として設定されたものです。
- 1.0未満:散発的発生(流行前)
- 1.0以上:流行入り(感染拡大傾向)
- 10.0以上:注意報レベル(地域的流行)
- 30.0以上:警報レベル(大規模流行)
出典:国立感染症研究所「インフルエンザ流行レベル判定について」
ワクチンと予防のポイント
- 今季ワクチン株(3価)
- A/ビクトリア/4897/2022(H1N1)
- A/パース/722/2024(H3N2)
- B/オーストリア/1359417/2021(Victoria系)
- 接種時期:抗体がつくまで約2週間かかります。 10〜11月の接種で年末〜年始の流行ピークに備えられます。
- 点鼻ワクチン(フルミスト):小児や注射が苦手な方の選択肢として注目されています。
当院では、今年度のフルミストの受付は終了しておりますが、注射ワクチンの接種は可能です。
詳しくは以下のページをご覧ください。
受診・検査の目安
以下のような症状がある場合は、早めの受診を検討しましょう。
- 38℃以上の発熱、強い倦怠感、関節・筋肉痛
- 咳や喉の痛みが強い
- 高齢者、持病のある方、妊娠中・乳幼児で症状がある
- 呼吸苦・胸痛・意識障害など重い症状
インフルエンザと新型コロナウイルスは症状が似ているため、必要に応じて同時検査を行うことがあります。
抗インフルエンザ薬(タミフル、ゾフルーザなど)は発症後48時間以内に投与すると効果的とされています。
当院の対応
- インフルエンザ予防接種:12月20日まで接種可能です。予約はWeb、お電話、受付窓口で受付中です。
- 発熱外来:感染対策のため、症状がある患者さんの同線を分けてご案内しています。来院前に以下のページをご確認ください。
まとめ
- 2025シーズンは、全国的に流行入りが早く、11月第45週時点で定点当たり21.82人という“拡大期入り”の数字が出ています。
- 岐阜県でも昨年より1か月程度早い流れが予想され、11月中のピーク前兆に注意が必要です。
- 10〜11月の早めのワクチン接種+日常の感染対策が最も重要な時期です。
- 体調を崩したくない受験生・ご家族・高齢者・基礎疾患のある方は、特に早期対応を。
- 熱や強い症状が出たら、速やかに受診・検査をご検討ください。