動悸や息苦しさ、めまい、頭痛、胃腸の不調、不眠など、検査をしても明確な異常が見つからないのに続く不調。
これらは「自律神経障害」と呼ばれる状態で、近年は現代社会の生活環境やストレスの影響もあり、悩む方が増えています。長時間労働や不規則な生活、過度なストレス、スマートフォンやPCによる夜間の光刺激、睡眠不足、運動不足などはすべて自律神経の乱れにつながります。さらに更年期や思春期などのホルモン変化、社会的孤立や精神的負担も重要な要因です。
この記事では、自律神経障害を西洋医学と漢方の両面から解説し、当院で用いる漢方薬や生活の工夫について紹介します。
西洋医学から見た自律神経障害
自律神経は、心臓・血管・消化管・内分泌系などをコントロールする神経で、交感神経と副交感神経のバランスによって調整されています。このバランスが崩れると多彩な症状が現れます。
- 全身症状:倦怠感、易疲労、めまい、頭痛
- 精神症状:不安感、集中力低下、気分変動
- 循環器症状:動悸、血圧の変動、冷えやほてり
- 消化器症状:食欲不振、下痢や便秘の繰り返し
- 睡眠障害:入眠困難、中途覚醒
治療は生活習慣改善(規則正しい睡眠・運動・食事)、心理的アプローチ、薬物療法(抗不安薬・抗うつ薬)などが行われます。
漢方から見た自律神経障害
漢方では、自律神経障害は「気・血・水」の失調や「肝・心・脾」の乱れとして捉えます。
- 肝気鬱結(かんきうっけつ):ストレスで気の巡りが滞り、イライラ、不眠、頭痛
- 心脾両虚(しんぴりょうきょ):疲れやすく、動悸、不安、食欲不振
- 陰虚火旺(いんきょかおう):のぼせ、寝汗、不眠、ほてり
- 気血両虚(きけつりょうきょ):めまい、倦怠感、集中力低下
当院でよく用いる漢方薬
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
不安、不眠、動悸を伴う方に。ストレスによる心身の高ぶりを鎮めます。
⚠️ 便秘や胃腸障害のある方では注意が必要です。 - 加味逍遙散(かみしょうようさん)
イライラや不安、冷えとほてりを伴う女性の自律神経症状に。更年期障害や月経不順にも用いられます。
⚠️ 長期使用では肝機能障害に注意。 - 抑肝散(よくかんさん)
神経が高ぶりやすく、怒りっぽい・不眠・不安を伴うタイプに。認知症の周辺症状にも処方されます。
⚠️ 過鎮静やふらつきに注意。 - 加味帰脾湯(かみきひとう)
倦怠感、不眠、気分の落ち込み、食欲不振を伴う方に。心脾を補い、精神面と消化機能を支えます。
⚠️ 甘草含有のため、併用薬に注意。 - 半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)
のどのつかえ感や胸の圧迫感、ストレスからくる胃の不快感を伴う自律神経症状に適応します。
⚠️ 胃腸が極端に弱い方には下痢を起こす可能性があります。
養生の工夫
- 睡眠のリズムを整える(毎日同じ時間に就寝・起床)
- 適度な運動やストレッチで気の巡りを良くする
- 深呼吸や瞑想などでリラックスを心がける
- スマートフォンやPCの使用は夜遅くまで控える
- 暴飲暴食や過度のカフェインを避け、バランスの良い食事を心がける
まとめ
自律神経障害は検査で異常が見つからないにもかかわらず、心身に多彩な症状をもたらします。現代社会におけるストレスや生活習慣の乱れが大きな要因であり、今後さらに増加することが予想されます。西洋医学的な治療と並行して、漢方は「体質の偏り」を整えることで改善をサポートします。
自律神経の不調でお困りの方は、当院へご相談ください。