( 診療案内 )

当帰(とうき)

血を補い、めぐらせ、心身をあたためる“補血の要”

概要

当帰(とうき/学名:Angelica acutiloba)は、血を補い、その流れを整える代表的な補血薬です。
古くから「女性のための生薬」として知られ、月経不順、冷え、貧血、更年期症状など、
血の不足や滞りから生じるさまざまな不調に広く用いられています。

単に「血を増やす」だけでなく、温めて流れを促す働きを併せ持つため、
「養血(ようけつ)」と「活血(かっけつ)」の両面から体を整えるのが特徴です。

いろはなクリニックでは、冷えや疲れ、月経に伴う不調、更年期の心身の揺らぎなどに対し、
体全体の調和を整える目的で処方しています。

基本情報

項目内容
生薬名当帰(とうき)
学名Angelica acutiloba(日本当帰)
使用部位
性味温・甘・辛
帰経肝・心・脾
分類補血薬(ほけつやく)

主な働き

血を補い、全身に栄養をめぐらせる

当帰は、体の内側を流れる「血(けつ)」を補い、全身の栄養と潤いを整えます。
血が不足すると、貧血、冷え、顔色の悪さ、爪や髪の衰え、疲れやすさなどが現れます。
当帰はこれらを改善し、体にやさしい温かさを与えます。

また、産後や病後など、血を失った後の回復にもよく用いられます。

血の巡りを促し、滞りを取り除く

当帰は「養血(血を補う)」だけでなく、「活血(血をめぐらせる)」働きも持ちます。
冷えによる血流の滞りや、生理痛・肩こり・手足の冷えなど、
血の停滞(瘀血:おけつ) が関係する症状に用いられます。

“血を増やす”と“血を動かす”という二方向の働きにより、
冷えと滞りを同時に改善へ導きます。

女性の体を整える

当帰は、女性の月経・妊娠・出産・更年期といった「血の変化が大きい時期」に寄り添う生薬です。
月経不順、月経痛、PMS(生理前のイライラ・不調)、更年期のほてりや情緒不安定などに用いられます。

血を補い、体と心のバランスを整えることで、
女性特有の周期的なリズムをやわらげ、穏やかな日常を取り戻します。

体を温め、冷えを改善する

当帰には、血行を促進し体を内側から温める作用があります。
冷えによって悪化する腰痛・月経痛・肩こり・手足の冷えなどに適しており、
「冷え」と「血の滞り」をともに整える点が他の補血薬との大きな違いです。

東洋医学的な視点

東洋医学では、当帰は 「血をつくり、血をめぐらせる」 生薬とされます。
性質は温かく、女性の体を支える「肝(かん)」や「心(しん)」の働きを助けます。

次のような体質・症状に用いられることが多いです

  • 血虚(けっきょ):貧血傾向、顔色の悪さ、めまい、不眠、爪や髪のツヤがない
  • 瘀血(おけつ):月経痛、肩こり、しびれ、シミやくすみ、手足の冷え

当帰はこの両方を整えることができるため、
「血を養う」+「血を動かす」 の両面から体質を改善していきます。

含まれる代表的な漢方処方

いずれも、血の不足や巡りの滞り、冷えなどを整える目的で用いられることが多い処方です。
(実際の処方は、体質や症状をもとに医師が判断します。)

注意点

  • 体が熱っぽい方、のぼせや顔の赤みが強い方では、温めすぎる場合があります。
  • 月経過多や出血傾向のある方では、使用量や期間に注意が必要です。
  • 妊娠中は、使用時期や体質によって適否が異なります。医師の判断のもとで使用してください。
  • 他の補血薬(例:地黄・芍薬など)と組み合わせることで、より穏やかにバランスを取ります。

一言メモ

当帰は「血のめぐりを花のようにひらかせる」生薬。
体をあたため、血を養い、やさしく巡らせることで、
心とからだに“しなやかさ”と“ぬくもり”を取り戻します。