( 診療案内 )

地黄(じおう)

血を養い、体を潤し、熱を鎮める“滋養の生薬”

概要

地黄(じおう/学名:Rehmannia glutinosa)は、血を補い、体を潤し、熱をしずめる働きをもつ代表的な補血薬です。
血虚(けっきょ)による貧血・乾燥・のぼせ・不眠などに用いられ、
特に 「陰(いん)を補う」=体の潤いと冷却の力を高める 生薬として知られています。

同じ補血薬の中でも、当帰や芍薬が「温めて巡らせる」方向に働くのに対し、
地黄は「冷やしながら潤す」方向に作用します。
体力低下や慢性の疲れ、のぼせ・寝汗などの「虚熱(きょねつ)」体質に向いており、
いろはなクリニックでは、女性の更年期症状や慢性疲労、皮膚の乾燥・炎症などに応じて処方しています。

基本情報

項目内容
生薬名地黄(じおう)
学名Rehmannia glutinosa
使用部位
性味寒・甘・苦
帰経肝・腎・心
分類補血薬(ほけつやく)

主な働き

血を補い、体を潤す

地黄は血液をつくる力を高め、体を内側からしっとりと潤します。
血虚による乾燥肌、貧血、めまい、倦怠感、動悸などに用いられ、
髪・肌・粘膜・月経など「血の栄養」に関わる部分を支える生薬です。
女性の体調管理や更年期のケアにもよく使われます。

熱をしずめ、のぼせやほてりを鎮める

地黄には、体内の余分な熱をやわらげる「清熱(せいねつ)」作用があります。
血や潤いが不足して内側が熱を帯びる「虚熱(きょねつ)」では、
顔のほてり、寝汗、口の乾き、のぼせ、不眠などが起こりやすくなります。
地黄はこれらの症状を穏やかに整え、からだに“涼やかさ”を取り戻します。

血流を整え、炎症をやわらげる

地黄は血を補いながら、ゆるやかに滞りを流し、炎症や充血を鎮めます。
皮膚や粘膜の修復を助ける働きもあり、慢性的な湿疹や皮膚トラブル、
「赤み+乾燥」が混在するタイプに適しています。

腎を補い、加齢による衰えを和らげる

地黄は東洋医学で「腎」を養う代表的な生薬でもあります。
腎は生命エネルギーの根(精)を蓄える臓であり、
加齢にともなう足腰のだるさ、耳鳴り、脱毛、慢性疲労などに用いられます。
八味地黄丸(はちみじおうがん)・牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)など、
加齢性の不調を整える処方には必ずといってよいほど含まれています。

東洋医学的な視点

東洋医学では、地黄は 「血と陰を補う」 代表的な生薬とされています。

  • 血虚(けっきょ):貧血、顔色の悪さ、月経量の減少、冷え
  • 陰虚(いんきょ):ほてり、のぼせ、寝汗、乾燥、不眠

このような「体のうるおいが足りず、内側が熱っぽい」タイプに特に適しています。
地黄は寒性の性質を持つため、温性の当帰とは対照的な関係にあり、
両者を組み合わせることで、血を補いながら温冷のバランス を整えることができます。

含まれる代表的な漢方処方

注意点

  • 地黄は性質が冷ややかで粘性があるため、胃腸が弱い方では胃もたれや下痢を起こすことがあります。
  • 冷え性や寒がりの方には、温性の生薬(桂枝・当帰など)との併用が望ましい場合があります。
  • 長期間の服用では、季節や体調に合わせて医師が調整を行います。
  • 乾地黄(かんじおう)・熟地黄(じゅくじおう)など、加工法により性質が異なるため、
    症状に応じた種類を選ぶことが大切です。

一言メモ

地黄は「体を内から潤す大地の力」。
乾いた体と心にしっとりと栄養を行き渡らせ、
ほてりを静め、穏やかで落ち着いたエネルギーを取り戻します。