抑肝散(よくかんさん)は、「神経が過敏でイライラしやすい」「気持ちが落ち着かない」「眠れない」といった精神的な高ぶりに対して使われる漢方薬です。もともとは小児の夜泣き・癇癪に使われていた処方ですが、現在では認知症や更年期障害の精神症状にも広く応用されています。
こんな症状に使われます
- イライラしやすく、怒りっぽい
- 不安感、緊張感が強い
- 寝つきが悪い、眠りが浅い
- 歯ぎしり、手足のピクつき
- 認知症に伴う興奮・徘徊・暴言など
- 更年期障害、自律神経失調症
小児~高齢者まで幅広い年代に使用されます。
中医学的な見方
中医学では、「肝気亢進(かんきこうしん)」や「肝風内動(かんぷうないどう)」といった、肝の働きが過剰になり神経興奮が高まった状態に使います。抑肝散はその名の通り、「肝の気」を鎮め(抑肝)、精神の安定を図る処方です。
成分と作用
以下の7種の生薬で構成されています:
- 釣藤鈎(ちょうとうこう)・川芎(せんきゅう):肝風を鎮め、神経の高ぶりを抑える
- 当帰・白朮・茯苓:気血を補い、精神安定と胃腸の調整
- 甘草・柴胡:全体の調整、炎症緩和、気の巡りを改善
「補いながら、鎮める」バランスの良さが特徴で、長期使用にも適しています。
使用上の注意
- 副作用:発疹、胃部不快感、下痢、肝機能異常などが報告されています。
- 併用注意:甘草含有の他剤との併用で偽アルドステロン症に注意。
- 慎重投与:極度の虚弱・冷え性が強い方には合わない場合があります。
精神症状が強い場合は、抗精神病薬や睡眠薬との併用が行われることもあります。
最後に
抑肝散は、「神経が高ぶりやすい」という体質に対して、体の内側からゆっくりと落ち着きをもたらす漢方薬です。副作用が比較的少なく、長期的に使える点も利点ですが、症状や体質に合った処方の選択が重要です。気になる症状がある場合は、お気軽にご相談ください。