桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)は、腹部の痛み・下痢・腹部膨満感など、慢性的な胃腸のトラブルに使われる漢方薬です。過敏性腸症候群(IBS)の補助療法としても広く用いられており、「お腹がゆるくなりやすい」「緊張でお腹が痛くなる」といった方に適しています。
こんな症状に使われます
- 腹痛、腹部の張り、ガスが多い
- 下痢と便秘を交互に繰り返す
- 食後の腹部膨満感、違和感
- 過敏性腸症候群(IBS)
- 緊張・ストレスによる腹痛
- 胃腸虚弱、冷えやすい体質
「整腸剤では改善しない」「便通に波がある」という方に多く用いられます。
中医学的な見方
中医学では、「肝脾不和(かんぴふわ)」や「気滞(きたい)・血虚(けっきょ)」などが背景にあるとされます。胃腸の緊張を緩め、気の巡りと血の巡りを整えることで、痛みや不快感を改善していきます。
桂枝加芍薬湯は、小建中湯や大建中湯よりもマイルドで、腹部の「緊張と冷え」に優しく作用する処方です。
成分と作用
以下の6種の生薬で構成されています
- 桂皮(けいひ):血行を促進し、体を温める
- 芍薬(しゃくやく):筋肉の緊張を緩め、腹痛を改善
- 大棗(たいそう)・甘草(かんぞう):胃腸を整え、緊張を緩和
- 生姜(しょうきょう):冷えを取り除き、胃腸を温める
- 炙甘草(しゃかんぞう):調和作用と補気作用
「腹部のこわばり」をゆるめて、便通を整えるのが大きな目的です。
使用上の注意
- 副作用:下痢、発疹、胃部不快感、浮腫などがまれに報告されています。
- 甘草含有:長期使用や併用で偽アルドステロン症(高血圧、低カリウム血症)に注意。
- 慎重投与:著しい虚弱や重度の下痢のある場合には注意が必要です。
急性の胃腸炎や細菌性腸炎などには適応しません。
最後に
桂枝加芍薬湯は、「慢性的にお腹が弱い」「ストレスでお腹にくる」といった方に、胃腸の緊張をやさしくほぐしてくれる漢方薬です。体質や症状のパターンに応じて、他の処方(小建中湯、半夏瀉心湯など)との使い分けが重要です。気になる症状がある方は、ぜひご相談ください。