40〜50代の女性に多くみられる「更年期障害」。のぼせやほてり、発汗、不眠、気分の落ち込み、イライラ、冷えなど多彩な症状が現れます。背景には女性ホルモン(エストロゲン)の分泌低下があり、心身のバランスが大きく揺らぐ時期にあたります。西洋医学ではホルモン補充療法(HRT)や抗うつ薬、安定剤などが用いられますが、副作用や体質の違いもあり、すべての方に適応できるわけではありません。漢方は体質に合わせた柔軟なアプローチができる点が特徴です。この記事では、更年期障害を西洋医学と漢方の両面から解説し、当院で用いる漢方薬や生活の工夫について紹介します。
西洋医学から見た更年期障害
閉経前後の約10年間を「更年期」と呼び、女性ホルモンの急激な低下により自律神経や精神症状が出現します。主な症状は以下です。
- 血管運動神経症状:のぼせ、ほてり、発汗、動悸
- 精神神経症状:不眠、気分の落ち込み、イライラ、不安
- その他:冷え、肩こり、腰痛、関節痛、頭痛、めまい、皮膚乾燥
治療はホルモン補充療法、向精神薬、漢方薬などが用いられます。基礎疾患や副作用のリスクを考慮して選択されます。
漢方から見た更年期障害
漢方では更年期障害を「腎虚(じんきょ)」を基盤とし、そこに「肝・心・脾」の失調が重なることで症状が出ると考えます。
- 腎陰虚(じんいんきょ):のぼせ、寝汗、口の乾き、動悸、不眠
- 腎陽虚(じんようきょ):冷え、腰痛、頻尿、倦怠感
- 肝気鬱結(かんきうっけつ):イライラ、情緒不安定、頭痛
- 気血両虚(きけつりょうきょ):倦怠感、めまい、集中力低下、顔色不良
当院でよく用いる漢方薬
- 加味逍遙散(かみしょうようさん)
イライラ、不安、冷えとほてりを繰り返す女性に。更年期障害の代表的処方です。
⚠️ 長期使用では肝機能障害に注意。 - 桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
瘀血タイプに。のぼせと冷え、肩こり、月経不順、下腹部痛を伴う場合に。
⚠️ 出血傾向のある方では注意。 - 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
血虚・水滞タイプに。冷え、むくみ、月経異常、頭痛に適応。
⚠️ 妊娠中の使用は注意が必要。 - 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
不安、不眠、動悸を伴う場合に。精神的ストレスが強い更年期症状に用います。
⚠️ 胃腸の弱い方では注意。 - 加味帰脾湯(かみきひとう)
倦怠感、不眠、気分の落ち込み、食欲不振を伴う場合に。心脾を補い、精神面と消化機能を支えます。
⚠️ 甘草含有のため、併用薬に注意。 - 抑肝散(よくかんさん)
神経の高ぶり、イライラ、怒りっぽさが目立つ場合に。睡眠障害や不安感にも適応します。
⚠️ 過鎮静やふらつきに注意。
養生の工夫
- 睡眠を十分にとり、自律神経を整える
- 軽い運動やストレッチで血流を促進する
- バランスのよい食事を心がけ、特に大豆イソフラボンを含む食品をとる
- ストレスを溜め込まないよう、趣味やリラクゼーションを取り入れる
まとめ
更年期障害は女性のライフステージにおいて避けて通れない変化ですが、症状の出方は人それぞれです。西洋医学の治療に加えて、漢方は体質や症状に合わせて柔軟にアプローチできる点が大きな特徴です。
更年期の不調でお困りの方は、当院へご相談ください。