いろはなクリニックでは、西洋医学を基本としながらも、必要に応じて漢方薬を活用した診療を行っています。
「漢方って効くの?」「なんだか難しそう」… そう感じる方も多いかもしれません。
でも、実際に使ってみると「夜よく眠れるようになった」「冷えがラクになった」「薬に頼りすぎず体調が整ってきた」とおっしゃる方も少なくありません。
このページでは、漢方の背景にある「東洋医学」について解説しながら、どのような方へ漢方をお勧めするかをお伝えしていきます。
東洋医学とは?
漢方の背景にあるのが東洋医学の考え方です。東洋医学では、病気を「部分的な異常」ではなく、「体全体のバランスの乱れ」としてとらえます。
例えばこんなイメージです:
- 西洋医学:咳が出ている → 咳止めの薬を処方する
- 東洋医学:咳が出る背景には「冷え」「乾燥」「疲れ」など体全体の不調がある
→ 体質や症状に応じた漢方薬で根本から整える
つまり、東洋医学では「今の症状だけでなく、なぜそうなっているか」に焦点を当てて診察を行います。
東洋医学の詳しい解説
東洋医学について、もう少し詳しい解説はこちら
漢方医学の背景には、「中医学(ちゅういがく)」という中国伝統医学の理論があります。中医学では、人の体を「全体として調和がとれていること」が健康であると考えます。
不調が現れるのは、どこかのバランスが崩れているサイン。症状だけを見るのではなく、「なぜその症状が出ているのか?」を体全体の働きから読み取っていきます。
五臓(ごぞう)とは?
中医学では、体の働きを「五臓」という5つの臓器に分類してとらえます。ただし、現代医学の「肝臓」「心臓」とは意味が少し違い、それぞれに身体・精神・感情の機能が含まれています。
- 肝(かん):気や血の流れを整える/怒り・イライラと関係
- 心(しん):精神・意識・思考をつかさどる/喜びと関係
- 脾(ひ):食べ物の消化・吸収/思い悩みと関係
- 肺(はい):呼吸・免疫/悲しみと関係
- 腎(じん):生命力やホルモンバランス/恐れと関係
たとえば、ストレスが続くと「肝」の働きが乱れて気の巡りが悪くなり、不眠や月経不順などが起こる…といった考え方をします。
気・血・水(き・けつ・すい)とは?
中医学では、体内を流れる「気(き)」「血(けつ)」「水(すい)」のバランスが整っていることが健康の条件だと考えます。
- 気:エネルギー、体を動かす力
- 血:血液や栄養、心身を潤すもの
- 水:血以外の体液(リンパ、汗、涙など)
これらのうちどれかが不足したり、滞ったりすると、体に不調が現れます。
たとえば…
- 「気」が不足すると:疲れやすい、やる気が出ない
- 「血」が不足すると:めまい、冷え、肌の乾燥、生理不順
- 「水」が滞ると:むくみ、頭重感、関節の痛み
漢方薬は、これらのバランスの乱れを整えることで、根本から体調を立て直すサポートをしてくれます。
こんなときに漢方が役立ちます
漢方は以下のような症状やお悩みに対して、相性がよいとされています
- 慢性的な冷え、疲労感、眠れないといった「なんとなく不調」
- 更年期障害や月経不順、PMSなど女性特有の症状
- 胃腸の不調(下痢、便秘、食欲不振)
- アレルギー症状(花粉症、アトピー性皮膚炎)
- がん治療後の体力低下や副作用軽減 など
具体的な処方例
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
「なんだか元気が出ない」「疲れやすい」と感じる方へ
この漢方は、消化機能を支えながら、全身のエネルギー(気)を補う力があります。慢性的な疲労感、病後の体力低下、がん治療後の回復支援にも用いられます。
- 長引くだるさや倦怠感
- 食欲低下や体力の消耗
- 抗がん剤治療後の疲労

六君子湯(りっくんしとう)
「胃が重い」「食欲がない」「お腹が張る」といった胃腸の不調に
六君子湯は、消化機能の低下に対してとても有効な漢方薬です。胃腸が弱りがちな方や、ストレスで食欲が落ちる方によく使われます。
- 食後の胃もたれや膨満感
- ストレス性の胃腸症状
- 朝ごはんを抜きがち、という生活習慣の方に

加味逍遙散(かみしょうようさん)
「イライラ」「不安定」「気分の波が」と感じる女性に
加味逍遙散は、ストレスの影響を受けやすい方、特に更年期や月経前後の心身のバランスが崩れがちな方に使われます。気の巡りを整えることで、心と体の不調をやわらげます。
- 更年期障害(ホットフラッシュ、気分の落ち込み)
- PMS(月経前症候群)
- ストレスや不眠、イライラ感

麦門冬湯(ばくもんどうとう)
「乾いた咳」「のどのイガイガ」に悩まされている方へ
麦門冬湯は、乾燥による咳やのどの違和感に効果的な漢方薬です。気道を潤し、痰を和らげることで、呼吸がラクになるようサポートします。
- 空咳が続いて夜眠れない
- 風邪のあとに咳だけ残っている
- 喉の乾燥・声のかすれ

あなたに合った漢方を
「どんな薬が自分に合うのか分からない」「自然な方法で体を整えたい」
いろはなクリニックでは、西洋医学と東洋医学、それぞれの強みを活かしながら、あなたにとって最善の選択肢をご提案します。症状だけでなく、体質・生活習慣・価値観も含めて、トータルで診ていく、それが私たちの目指す医療です。
エキス製剤解説
エキス製剤の詳細な解説を作成しました。ぜひご覧ください。
1. 葛根湯 風邪のひき始め・首肩のこり・ゾクッと寒気がしたら
7. 八味地黄丸 頻尿・夜間尿・足腰のだるさ…「年齢のせいかな」に
12. 柴胡加竜骨牡蛎湯 イライラ・不安・不眠・動悸…ストレス過多な心と体に
14. 半夏瀉心湯 胃が重い・ムカムカする・下痢と便秘を繰り返す時に
16. 半夏厚朴湯 のどがつかえる・息苦しい・胃が重い…ストレス由来の体の不調に
17. 五苓散 むくみ・頭痛・下痢・めまい…「水」の滞りを改善する漢方薬
19. 小青竜湯 水っぱな・咳・鼻づまり…アレルギーや風邪の「水」の症状に
24. 加味逍遙散 イライラ・不安・ほてり・冷え…ゆらぎやすい心と体に
25. 桂枝茯苓丸 月経不順・生理痛・冷えとほてり…血の巡りが気になる方に
41. 補中益気湯 疲れやすい・食欲がない・元気が出ない…そんな方に
43. 六君子湯 胃のもたれ・食欲不振・吐き気…胃腸が弱っている方へ
45. 桂枝湯 ぞくぞく寒気・微熱・汗が出る…風邪のごく初期に
50. 荊芥連翹湯 のどの痛み・発熱・口の渇き…風邪の中期〜後期に
53. 疎経活血湯 肩・腰・関節の痛みが取れにくい…慢性的な“痛み体質”に
59. 治頭瘡一方 頭皮のかゆみ・赤み・膿疱…皮膚炎にやさしくアプローチ
62. 防風通聖散 肥満・便秘・高血圧・吹き出物…体に“熱”や“余分なもの”がたまっている方に
66. 麦門冬湯 乾いた咳・痰が少ない・咽のイガイガに
68. 芍薬甘草湯 こむら返り・筋肉のけいれん・急な痛みに即効性のある漢方薬
89. 治打撲一方 打撲・捻挫・筋肉痛…ケガのあとに“内側から”効かせる漢方薬
100. 大建中湯 冷え・腹痛・お腹の張り…内臓が冷えて動きが悪い方に
107. 牛車腎気丸 足腰の冷え・しびれ・頻尿・疲れやすい…加齢にともなう不調に
136. 清暑益気湯 夏バテ・食欲不振・だるさ…暑さで体がまいっている方に
137. 加味帰脾湯 疲れやすい・眠れない・気持ちが落ち込みやすい方に